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物語編

第三章 第三七話 対話編

CASE 観音 の裏に 勢至

 

マナミ 自在に観る、観音って、どういうものなの?
マサシ 観音とは、悲を象徴する、智慧の菩薩なのさ。
マナミ 智が生れると、悲が産まれるのは、どうして?
マサシ 在りのまま、世を眺めると、どうなると思う?
マナミ 楽しむと、苦しめられる、一切皆苦に見える。
マサシ そうさ、たとえ、今は、楽を味わっていても、
    後で、苦に変わると見て、菩提心が培われる。
マナミ 偉大な勢力、勢至って、どういうものなの?
マサシ 勢至とは、力を象徴する、功徳の菩薩なのさ。
マナミ 徳が生れると、力が産まれるのは、どうして?
マサシ 在りのまま、受け容れると、どうなると想う?
マナミ 善を見とめて、悪も見とめて、全て認めるの。
マサシ そうさ、たとえ、今は、悪に関わっていても、
    後で、善に変わると見て、無量心が培われる。
マナミ 智を使って、明らめるほど、菩提心になり、
    徳を遣かって、諦らめるほど、無量心になる?
マサシ そうさ、悲と力を培うため、衆生を済度する。
マナミ 衆生済度は、決して諦めない、欲を抱くのね。
マサシ その欲を、徳を介しながら、智に変えるのさ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 観音 と 弥陀 と 勢至

 

サトミ どうして、弥陀の左側に、観音が侍るのかな?
メグミ 左柱は、柔和な仕組で、慈悲を司るからなの。
サトミ どうして、観音は、左手に蕾を持つのかな?
メグミ 蕾を取り上げて、苦しみの因を摘むためだよ。
サトミ どうして、観音は、右手に蓮華を持つのかな?
メグミ 花を開くことで、悲しみの眼を啓くためだよ。
サトミ どうして、観音は、頭に仏冠を着けるのかな?
メグミ 仏を頭に上げて、慈しみの目を覚ますためよ。
サトミ どうして、弥陀の右側に、勢至が侍るのかな?
メグミ 右柱は、峻厳な仕組で、威徳を司るからなの。
サトミ どうして、勢至は、両手を合せているのかな?
メグミ 意と行を合せて、大いなる徳を重ねるためよ。
サトミ どうして、勢至は、両足で大地を揺るがすの?
メグミ 地に足を着けて、大勢を涅槃に至らせるのよ。
サトミ どうして、勢至は、頭に水瓶を着けるのかな?
メグミ 不死の甘露を宿して、涅槃に救い上げるのよ。
サトミ そっか、すべてが、涅槃に至る仕組であって、
    すべてが阿弥陀浄土、この瞬間も涅槃なのね。
メグミ うふっ、そうなの、これこそ、弥陀の済度よ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 自由 の裏に 自在

 

マナミ 相対の自由、自由って、どういうものなの?
マサシ 自由とは、相対的な自由、拘束しない自由さ。
マナミ 絶対の自由、自在って、どういうものなの?
マサシ 自在とは、絶対的な自由、拘束がない自由さ。
マナミ う~ん、良く解らない、どういうことなの?
マサシ Aを望み、Aに臨んだら、どうなると思う?
マナミ Aに臨めて、自由であると、感じると想うの。
マサシ Aを望み、非Aに臨むと、どうなると思う?
マナミ Aに臨めず、自由でないと、感じると想うの。
マサシ 非Aに臨んで、Aを望むとき、どう思うかな?
マナミ Aに臨めず、自由でないと、感じると想うの。
マサシ 非Aに臨んで、非Aを望むと、どう思うかな?
マナミ 非Aに臨み、自在であると、感じると想うの。
マサシ うん、望むものに臨めるのが、自由であり、
    反対に、臨むものを望めるのが、自在なのさ。
マナミ 不自由を、裏側に抱えるのが、自由であり、
    不自由でも、自由に変えるのが、自在なのね。
マサシ そうだよ、自由に過ぎるから、傍から見ると、
    まるで、不自由にも見える、完全なる自由さ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 自由 の先に 自在

 

サトミ 欲を適える、自由って、どういうものかな?
メグミ 自由とは、良くを求めて、良くが適うことよ。
サトミ 自由は、望みに対して、臨みを合わせるの?
メグミ 自ずから、解くを使って、良くを適えるのよ。
サトミ じゃあ、徳を溶かして、欲を充たしているの?
メグミ そうだよ、徳は減るけど、欲が適えられるよ。
サトミ 徳を叶える、自在って、どういうものかな?
メグミ 自在とは、解くを求めて、解くが叶うことよ。
サトミ 自在は、臨みに対して、望みを合わせるの?
メグミ 自ずから、良くを越えて、解くを叶えるのよ。
サトミ じゃあ、欲が解かれて、徳を満たしているの?
メグミ そうだよ、欲は減るけど、徳が叶えられるよ。
サトミ それならね、自由にしても、自在にしても、
    適える事でも、叶え方が違う、そういうこと?
メグミ そうよ、欲と徳、どちらか、選べば良いのよ。
サトミ じゃ、あたし、どっちを、択べば良いと思う?
メグミ どちらでも良いのよ、あなたの、自由にして。
サトミ ううん、より良いものを、教えて欲しいの。
メグミ じゃ、後者が良いよ、これこそ、自在だから。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 自 由 自 在

 

サトシ あのね、自由自在って、どういうものかな?
マサシ それはね、菩薩が達した、境地のことなのさ。
サトシ 菩薩が至る、自由って、どういうものかな?
マサシ 自由とは、徳を溶かして、欲を適えることさ。
サトシ 菩薩が到る、自在って、どういうものかな?
マサシ 自在とは、欲を解かして、徳を叶えることさ。
サトシ つまり、解くを以って、良くに変えても良く、
    逆に、良くを持って、解くに換えても良いの?
マサシ そうさ、徳を欲に変えれば、欲界に生まれ、
    逆に、欲を徳に換えれば、色界に埋まれるよ。
サトシ 天人は、善くしか追えない、欲界だけだけど、
    菩薩なら、解くまで負うから、色界なんだね。
マサシ 天人は、欲に縛られるから、上しか行けず、
    菩薩なら、欲に拘らないから、下にも往ける。
サトシ そっか、欲天の天人って、自由に見えるけど、
    思いの外、偏っていて、自由じゃないんだね。
マサシ 天人は、思いのまま、見ているだけだからね。
サトシ 行けないばかりか、そもそも、知らないのか。
マサシ 一方、菩薩なら、どの世界にも、自由自在さ。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 自在なき自由 と 自由なき自在

 

サトミ 自由と自在、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 好きにする、自由って、どういうものかな?
メグミ 自由とは、思いのままが、在りのままなのよ。
サトミ 在りのまま、自在って、どういうものかな?
メグミ 自在とは、在りのままが、思いのままなのよ。
サトミ 自由を望み、自在に臨まないと、どうなるの?
メグミ 自在なき自由なんて、不自由に過ぎないよ。
サトミ じゃ、どんなときにも、思いのままなのかな?
メグミ そうよ、それがどれだけ、不自由か解るかな。
サトミ 自在を望み、自由に臨まないと、どうなるの?
メグミ 自由なき自在なんて、無意志に過ぎないよ。
サトミ じゃ、どんなときにも、在りのままなのかな?
メグミ そうよ、それがどれだけ、無意志か解るかな。
サトミ 自由だけは、思いのままが、命取りになり、
    自在ばかりは、在りのままが、命取りになる。
メグミ うん、自由と自在、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、自在を追い、自由を負っていくの?
メグミ そうなの、自由を究め、自在を極めていくの。
サトミ ……………………!!

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