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物語編

第三章 第三八話 対話編

CASE 無 の裏に 空

 

マナミ 実感が有ること、色って、どういうものなの?
マサシ 色とは、色に彩られている、二元の世界だよ。
マナミ 色の世界を、実感するためには、どうするの?
マサシ Aを肯定して、非Aを否定すれば、良いのさ。
マナミ 実感が無いこと、無って、どういうものなの?
マサシ 無とは、闇に覆われている、一元の世界だよ。
マナミ 無の世界に、到達するためには、どうするの?
マサシ Aも否定して、非Aも否定すれば、良いのさ。
マナミ 無は、色を消し続けて、暗黒の闇になること?
マサシ そうさ、何も見えないから、実感が無いのさ。
マナミ 実体が無いこと、空って、どういうものなの?
マサシ 空とは、光に包まれている、一元の世界だよ。
マナミ 空の世界に、到達するためには、どうするの?
マサシ Aも肯定して、非Aも肯定すれば、良いのさ。
マナミ 空は、色を越え続けて、透明な光になること?
マサシ そうさ、何にも見えるから、実体が無いのさ。
マナミ なるほど、同じ一元でも、真逆の世界なのね。
マサシ そうさ、辿って来た過程が、正反対だからね。
    一元には、色々なものが、埋まっているのさ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 無 の先に 空

 

サトミ 否定を究める、無って、どういうものかな?
メグミ 無とは、二元を否定して、一元に至ることよ。
サトミ 肯定を極める、空って、どういうものかな?
メグミ 空とは、二元を肯定して、一元に到ることよ。
サトミ そもそも、二元の世界って、どういうもの?
メグミ Aが生まれると、非Aが産まれる、世界だよ。
サトミ Aを、肯定するとき、非Aを否定しているの?
メグミ 非Aを、肯定するとき、Aを否定しているよ。
サトミ どちらか、偏っていると、二元の世界なのね。
メグミ どちらにも、偏ってないと、一元の世界なの。
サトミ 否定を究めて、偏らなくなると、どうなるの?
メグミ Aでも無い、非Aでも無いと、無に至るのよ。
サトミ 肯定を極めて、偏らなくなると、どうなるの?
メグミ Aでも有る、非Aでも有ると、空に到るのよ。
サトミ この話を、肯定する自分と、否定する自分。
    その両方が、現れて来て、何か落ち着かない。
メグミ どちらか、隠して置いたら、落ち着くけどね。
サトミ この話、聞かなかったことに、しようかな。
メグミ それでも、無には行けるよ、認めないけどね。
サトミ ……………………

 


 

CASE 無 という 空

 

サトシ 色が無くなる、無って、どういうものかな?
アツシ 無とは、色を明らめずに、諦らめることだな。
サトシ どちらも、否定することで、一元に至るの?
アツシ 闇で覆って、色を見ない、無の境地に達する。
サトシ 色が映らない、空って、どういうものかな?
アツシ 空とは、色を明めてから、諦らめることだな。
サトシ どちらも、肯定することで、一元に到るの?
アツシ 光で照らし、色を越える、空の境地に達する。
サトシ 闇で覆い、色を消し続けて、無に至るのか。
    光で照らし、色を超え続けて、空に到るのか。
アツシ 無と空は、同じ一元だが、似て非なるものだ。
サトシ う~ん、同じ一元なら、同じ気がするけどね。
アツシ いや、避け続けた結果と、求め続けた結果が、
    同様に、見えるなんて、無智にも程があるぞ。
サトシ じゃ、過程を見ないから、同じに見えるだけ?
アツシ そうだ、一元に畳み込まれた、次元が違うな。
サトシ なるほど、過程を認めない、結果が無になり、
    反対に、過程を認めれば、結果が空になるか。
アツシ ああ、こうして認めていけば、無が空になる。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 無 と 色 と 空

 

サトシ 二元に表れる、色って、どういうものかな?
アツシ 陰と陽を、固定すると現れる、形のことだな。
    形が固まるから、そこに、実感が現れて来る。
サトシ 一元に表れる、無って、どういうものかな?
アツシ 陰と陽を、否定すると現れる、闇のことだな。
    暗黒の闇だから、どんな実感も消えてしまう。
サトシ 一元に表れる、空って、どういうものかな?
アツシ 陰と陽を、肯定すると現れる、光のことだな。
    透明な光だから、どんな実感も湧いてしまう。
サトシ う~ん、一元が二つあるのは、おかしくない?
アツシ いや、無から空まで、無数の段階が存在する。
サトシ じゃあ、否定し続けて、最下層の無に至り、
    逆に、肯定し続けるなら、最上層の空に到る?
アツシ そうだ、色々なものを、乗り越えて行くほど、
    より、大いなる空に、到ることが出来る訳だ。
サトシ う~ん、その「より」が、二元そのものだよ。
アツシ そうだな、これを否定しても、無には行ける。
サトシ 一方で、そうかもしれないとも、思うんだ。
アツシ そうだな、これを肯定すれば、空まで行ける。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 空のない無 と 無のない空

 

サトミ 無と空、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 否定し尽くす、無って、どういうものかな?
メグミ 無とは、色を消し去って、一元に至ることよ。
サトミ 肯定し尽くす、空って、どういうものかな?
メグミ 空とは、色を乗り越えて、一元に到ることよ。
サトミ 無を重んじて、空を軽んじると、どうなるの?
メグミ 空のない無なんて、単なる無明に過ぎないよ。
サトミ じゃ、否定するだけで、肯定しないのかな?
メグミ そうよ、涅槃に見えても、無闇に他ならない。
サトミ 空を重んじて、無を軽んじると、どうなるの?
メグミ 無のない空なんて、単なる空寂に過ぎないよ。
サトミ じゃ、肯定するだけで、否定しないのかな?
メグミ そうよ、涅槃に見えても、空漠に他ならない。
サトミ 無だけは、明りが消されて、無暗になるし、
    空ばかりは、彩りが消されて、空白になるの?
メグミ うん、無と空、その両方が、必要になるのよ。
サトミ じゃあ、空を追いながら、無を負っていくの?
メグミ うん、無を究めながら、空を極めていくのよ。
サトミ ……………………!!

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