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物語編

第三章 第四一話 対話編

CASE 無我 の裏に 真我

 

マナミ 真我は無い、無我説って、どういうものなの?
マサシ 無我説は、全ては無我って、説くことなのさ。
マナミ 真我は有る、真我説って、どういうものなの?
マサシ 真我説は、総ては真我って、説くことなのさ。
マナミ う~ん、無我説と真我説、どちらが正しいの?
マサシ どちらが、正しいではなく、どちらも正しい。
マナミ じゃあ、無我説が正しいって、どういうこと?
マサシ あらゆる、二元の消え方は、無我であるのさ。
マナミ じゃあ、真我説が正しいって、どういうこと?
マサシ いかなる、一元の現れ方も、真我であるのさ。
マナミ すると、消えるから無我、現れるから真我ね。
マサシ うん、経過は無我でも、結果は真我なのさ。
    つまり、無我を辿る、という、真我に至るさ。
マナミ 無我説は、前半を説いて、真理と解くけど、
    真我説では、後半を解いて、真理と説くのね。
マサシ そうさ、どちらも、真理を説いているだけさ。
マナミ せっかく、分かりやすく、解いてくれたのに、
    一方に、囚われたから、別けてしまったのね。
マサシ 今回こそ、解かりやすく、説いたつもりだよ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 無 所 有 処

 

サトシ 上から二番目、無所有処は、どういうもの?
アツシ 無所有処は、有に関わる、無色界のことだな。
サトシ 此処って、一元だけど、どんな一元なのかな?
アツシ 存在は、存在しないって、見ている境地だな。
サトシ 非存在を、認めているなら、完全な一元だね。
アツシ 残念ながら、実際の所は、そうでもないんだ。
サトシ どうして、無我を認めても、一元じゃないの?
アツシ 実際に、何者も存在しないと、見とめるとき、
    裏で、何者かが存在すると、見とめてしまう。
サトシ 確かに、欲も型もない、一元の世界だけど、
    潜在的に、二元に落ちる、可能性が有るわけ?
アツシ ああ、何者も存在しないと、思っていると、
    いずれ、何者かが存在すると、想ってしまう。
サトシ それなら、真の一元に入るには、どうするの?
アツシ 有に関して、何であろうと、思い込まない。
    想い込むから、一元が崩れる、因を抱え込む。
サトシ そっか、思い込むから、二元が埋まれるのか。
    じゃ、一元に居たいなら、想い込まない事か。
アツシ そうだが、そうだと、もう、思い込んでいる。
サトシ ……………………

 


 

CASE 無我 と 非我 と 真我

 

サトシ 本当の自分は、存在するの、存在しないの?
マサシ 有ると考えても、無いと考えても、良いのさ。
サトシ う~ん、良く解からない、どういうことなの?
マサシ 無我にしても、真我にしても、非我なのさ。
    自我の捉え方で、非我の捕え方も、変るのさ。
サトシ 自我は無いと、我を観じるのは、どんなとき?
マサシ 古い自我が、消えてしまうと、捕えるときさ。
サトシ 真我が有ると、我を感じるのは、どんなとき?
マサシ 新しい我が、現われてくると、捉えるときさ。
サトシ どちらも、偽の我が消える点は、同じなんだ。
マサシ そうさ、両者は真の我に非ず、非我なのさ。
サトシ でも、自分が消えるなんて、詰まらなくない?
マサシ そうさ、そう考えてしまうと、無我なのさ。
    消えてこそ、現れるものだって、有るんだよ。
サトシ そっか、偽物の自分が消える、だからこそ、
    そこから、本物の自分が現れる、ってことか。
マサシ そうさ、そう考えられるなら、真我なのさ。
サトシ ああ、詰まらないと言った、自分が恥かしい。
マサシ それは、偽の自我だから、気にしなくて良い。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 真我なき無我 と 無我なき真我

 

サトミ 無我と真我、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 無我を説く、無我説は、どういうものかな?
メグミ 無我説は、自我は無いと、そう説くことだよ。
サトミ 真我を説く、真我説は、どういうものかな?
メグミ 真我説は、自我は有ると、そう説くことだよ。
サトミ 無我を望み、真我に臨まないと、どうなるの?
メグミ 真我なき無我なんて、唯の真我に過ぎないよ。
サトミ じゃ、自我が無いって、否定に徹しているの?
メグミ そうよ、否定が過ぎると、肯定に転じるのよ。
サトミ 真我を望み、無我に臨まないと、どうなるの?
メグミ 無我なき真我なんて、只の無我に過ぎないよ。
サトミ じゃ、自我が有るって、肯定に徹しているの?
メグミ そうよ、肯定が過ぎると、否定に転じるのよ。
サトミ 無我だけでは、我を撤して、我に徹するし、
    真我ばかりでは、我に徹して、我を撤するの?
メグミ うん、無我と真我、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、真我を究め、無我を極めていくの?
メグミ そうなの、無我を超え、真我を越えていくの。
サトミ ……………………!!

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