物語編
第三章 第四六話 物語編
第三章 信念 と 疑念
第四六話 表を信じる念 と 裏を疑がう念
「それ故に、人界は何処よりも、貴いのである。
天使より、神が人間を慈しむのは、これ故である。
梵天は、型である人界を通して、欲界を愛している。」
「しかしながら、牢獄の如く、人界を見なして、
生まれた事を悔い、天に帰りたいと嘆く子がいる。
未熟だが無理もない、私も君も遥か昔は初心だった。」
「あたかも、熱い湯に満ちた、湯船に浸かる際、
足だけ入れて、中の湯の熱さを、確かめるように、
天人は、いつでも逃げられるよう、人間に生まれる。」
「それに加えて、肥溜めの如く、人界を見なし、
泣き喚く子を、哀れに想って、天に導く親がいる。
不本意だが仕方ない、天に逃げ帰るのも道ではある。」
「さながら、貧しい者に、魚の釣り方を教えず、
飢える度、魚を買い与える、豊かな善人のように、
天人は、上から餌を垂らして、地の者を救い上げる。」
「それに加えて、支配地の如く、人界を見なし、
天才を忘れず、地上に降りて、人を弄ぶ輩がいる。
人界の掟破りだが、それさえも、欲界の縮図である。」
「たとえば、年を取った者が、大人と交わらず、
子供と交わり、破格なる待遇を、望むかのように、
天人は、王族と自らを見なし、低俗な交わりを喜ぶ。」