物語編
第三章 第四八話 物語編
第三章 観念 と 諦念
第四八話 念を明らめる と 念を諦らめる
「誰も神の意が解からず、人の世を蔑んでいる。
神々も人々も、知恵が稔らずに、実に嘆かわしい。
これは偏に、転輪王を殺めた、我らが咎に他ならぬ。」
「この罪、何も知らない者に、負わせられない。
色界の責は、命に囚われて、神を刺した我にあり、
欲界の過ちは、法に捕われて、主を裁いた汝にある。」
「それゆえ、この罪を悔い改め、再び遣り直す。
貴い犠牲から、学ぶべきを学んで、神の道を正し、
主なき世に、神殿の仕組を整え、救世主を出迎える。」
「我は、歴史の舞台に立ち、顕教を世に伝える。
即ち、型を重んじながら、使命に囚われていない、
勧善懲悪の道を説いて、善人を救世主に引き合せる。」
「汝は、舞台の袖裏に回り、密教で世を治めよ。
即ち、法を重んじながら、律法に捕われていない、
自業自得の道を解いて、悪人を救世主に引き合せよ。」
「ありとあらゆる人を、転輪王の下に導くため、
敢えて僧伽を分裂し、人々を巻き込む仕掛を作る。
裏で繋がる陰陽の極は、太源に誘う良い仕組となる。」
「破和合僧の罪人として、汝は歴史に記される。
しかし、全てが終った後に、私が栄光を与えよう。
汝が努めないと誰も務めない、生命の実であったと。」