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物語編

第三章 第四三話 対話編

CASE 転生 の裏に 解脱

 

マナミ サンサーラ、転生って、どういうものなの?
マサシ 転生とは、因果を介して、繰り返すことだよ。
マナミ モークシャ、解脱って、どういうものなの?
マサシ 解脱とは、因果を解して、断ち切ることだよ。
マナミ 欲界に、生まれ変わるのは、どんなときなの?
マサシ 非Aより、Aが良いって、欲を持つときだよ。
マナミ 欲の世界に、Aを望むとき、生まれてくるの?
マサシ 最終的に、非Aに臨んで、死んでしまうのさ。
マナミ 死後に、こんな筈がないと、そう考えるから、
    もう一度、Aを望むため、生まれて来るの?
マサシ そうさ、今度こそって、生まれて来るけど、
    最終的に、非Aに臨んで、死んでしまうのさ。
マナミ 前世を、覚えていたら、飽きてくる筈なのに、
    どうして、前世のことを、忘れてくるのかな?
マサシ 失敗を、認めたくないから、隠しているのさ。
マナミ 今の生に、集中するためって、聞いた事ある。
マサシ いいね、嘘も付いてないし、巧く隠している。
マナミ じゃ、実際は違うのかな、そんな筈がないの?
マサシ ううん、今生に集中しなよ、それで問題ない。
マナミ ……………………

 


 

CASE 転生 の先に 解脱

 

サトミ 仮なる涅槃、無色界は、どういうものかな?
メグミ 無色界は、欲界と色界を、超える涅槃なのよ。
サトミ 真なる涅槃、般涅槃は、どういうものかな?
メグミ 般涅槃は、輪廻と涅槃を、越える涅槃なのよ。
サトミ 無色界では、どうして、不完全な涅槃なの?
メグミ 他の人が、輪廻に止まり、苦しんでいるのに、
    自分だけが、涅槃に居ると、どうなると思う?
サトミ 我が内にある、陰陽の二元は、消えていても、
    自分の外にある、自他の二元は、残っている。
メグミ うん、輪廻と涅槃の、新たな二元が現れたの。
サトミ やっと、涅槃に至ったのに、到ったからこそ、
    新たな二元が、生まれるなんて、皮肉だよね。
メグミ うん、涅槃に逃げても、輪廻に追われるのよ。
サトミ じゃあ、新しく埋まれた、涅槃と輪廻の対立。
    この二元を越えるには、どうすれば良いかな?
メグミ 徳を積んで、器を広げて、全てを受け容れる。
    世界すべてを、自分と見れば、一元になるよ。
サトミ 嫌な人まで、受け容れるの、嫌なんだけどな。
メグミ わたしは、そういう人も、受け容れるからね。
サトミ ……………………

 


 

CASE 転生 という 解脱

 

サトシ どうすると、欲の世界に、転生するのかな?
マサシ 利己を持して、欲を抱くと、転生できるのさ。
サトシ どうすると、欲の世界を、解脱するのかな?
マサシ 利己を辞して、欲を解くと、解脱できるのさ。
サトシ どうすると、徳の世界に、転生するのかな?
マサシ 利他を持して、型を抱くと、転生できるのさ。
サトシ どうすると、徳の世界を、解脱するのかな?
マサシ 利他を辞して、型を解くと、解脱できるのさ。
サトシ どうすると、無の色界に、転生するのかな?
マサシ 利己も利他も、諦らめると、転生できるのさ。
サトシ どうすると、無の色界を、解脱するのかな?
マサシ 利己も利他も、明らめると、解脱できるのさ。
サトシ でも、利己を望んだら、欲界に転生するし、
    たとえ、利他を望んでも、色界に転生するよ。
マサシ うん、生まれ変っても、別に構わないのさ。
    今度は、輪廻と涅槃、その対立を越えるのさ。
サトシ 仮の涅槃は、二元を去って、一元に至るけど、
    真の涅槃では、二元に在って、一元を悟るの?
マサシ 今、まさに、ここに在って、一元を悟るのさ。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 解脱なき転生 と 転生なき解脱

 

サトミ 転生と解脱、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 生れ変わる、転生って、どういうものかな?
メグミ 転生とは、等しい段階で、巡り続けることよ。
サトミ 乗り越える、解脱って、どういうものかな?
メグミ 解脱とは、異なる段階に、移り変わることよ。
サトミ 転生を望み、解脱に臨まないと、どうなるの?
メグミ 解脱なき転生なんて、単なる円に過ぎないよ。
サトミ じゃ、同じ段を回って、円を描くだけなの?
メグミ そうよ、縁は生じるけど、業は越えられない。
サトミ 解脱を臨み、転生に臨まないと、どうなるの?
メグミ 転生なき解脱なんて、単なる点に過ぎないよ。
サトミ じゃ、違う階に昇って、点を画くだけなの?
メグミ そうよ、業は越えるけど、縁が生まれないよ。
サトミ 転生だけは、巻き込んでも、抜け出せないし、
    解脱ばかりは、抜け出しても、巻き込めない。
メグミ うん、転生と解脱、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、解脱を究め、転生を極めていくの?
メグミ そうなの、転生を超え、解脱を越えていくの。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 滅 尽 定

 

サトシ 三界を越えた、滅尽定って、どういうもの?
アツシ 滅尽定とは、煩悩を滅尽した、涅槃のことだ。
サトシ 此処って、一元だけど、どんな一元なのかな?
アツシ いいや、この境地は、どんな表現も出来ない。
サトシ 其処まで、二元でないなら、完全な一元だね。
アツシ 残念ながら、実際の所は、そうでもないんだ。
サトシ どうして、煩悩を滅尽して、一元じゃないの?
アツシ たとえ、自分が解脱して、涅槃に達しても、
    裏で、他者が転生して、輪廻に苦しんでいる。
サトシ 確かに、自分は解脱して、一元の世界だけど、
    潜在的に、二元に戻る、可能性が有るのかな?
アツシ ああ、涅槃に止まれるって、思ってしまうと、
    いずれ、涅槃に留まれないと、想ってしまう。
サトシ それなら、真の一元に入るには、どうするの?
アツシ たとえ、二元でない、一元に到ろうとしても、
    一元と二元に分けた瞬間、それは二元なんだ。
サトシ う~ん、涅槃を望んで、輪廻に臨まなかった。
    結局、そうすると、輪廻に臨ませるだけなの?
アツシ そうだ、輪廻の中に、涅槃を認めることだな。
サトシ ……………………!!

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