第三章 第四四話 対話編
CASE 執念 の裏に 断念
マナミ 念に囚われる、執念って、どういうものなの?
マサシ 執念とは、良くに従い、集中し続けることさ。
マナミ 自然に、集中が続くのは、どういうときなの?
マサシ 欲に従って、好きなものを、望んでいる時さ。
マナミ 念が断たれる、断念って、どういうものなの?
マサシ 断念とは、飽くに順い、集中が切れることさ。
マナミ 自然に、集中を欠くのは、どういうときなの?
マサシ 欲に順って、嫌いなものに、臨んでいる時さ。
マナミ 好きなら、肯定しやすく、集中しやすいし、
嫌いならば、否定しやすく、集中しにくいの?
マサシ そうさ、思いのまま念じると、そうなるよ。
マナミ じゃ、在りのままを念じるのは、どうするの?
マサシ 好き嫌いに分けず、この瞬間に集中するのさ。
マナミ 善い悪いを解さずに、まるごと受け容れるの?
マサシ 良くと飽くを介さずに、すべて見とめるのさ。
マナミ なるほど、飽きないから、ずっと集中が続く。
マサシ そうさ、欲を念じずに、徳を念じているのさ。
マナミ この時を、生きていることに、感謝するのね。
マサシ そうさ、欲張りだと、すぐ飽きちゃうけどね。
マナミ ……………………!!
CASE 執念 の先に 断念
サトミ 念を尽くす、執念って、どういうものかな?
メグミ 執念とは、徳を溶かして、欲に変えることよ。
サトミ 良くは、器に収まるかぎり、良くに留まるの?
メグミ そうだよ、徳が大きいと、良くが長く続くよ。
サトミ 念が尽きる、断念って、どういうものかな?
メグミ 断念とは、徳が無くなり、欲が止まることよ。
サトミ 良くは、器を越えるときに、飽くに変わるの?
メグミ そうだよ、徳が小さいと、飽くが早く来るよ。
サトミ つまり、徳が小さいと、欲も念も小さくなり、
逆に、徳が大きいと、欲も念も大きくなるの?
メグミ そうよ、器が小さいと、熱し易く飽き易いし、
逆に、器が大きいと、熱し難く飽き難いのよ。
サトミ そっか、徳を具えると、念が続きやすいけど、
捕われて、徳を損なうと、念が尽きるわけね。
メグミ そうよ、囚われないことが、徳の本質だから、
執着して、念に捕らわれたら、念が尽きるよ。
サトミ う~ん、徳が有ると、欲が適いやすいけど、
逆に、囚われちゃうと、欲が叶いにくいのね。
メグミ うふっ、徳を欲にしたら、すべて逆になるよ。
サトミ ……………………!!
CASE 執念 という 断念
サトミ ねぇ、集中力を磨くには、どうしたら良いの?
マナミ 好きな物と、嫌いな物では、集中し易いのは?
サトミ そんなの、好きなものに、決まっているわよ。
マナミ うん、好きになるほど、集中し易くなるし、
反対に、嫌いになるほど、集中し難くなるの。
サトミ じゃ、好きなものほど、集中力が付くわけね。
つまり、好きにしてれば、良いってことよね。
マナミ うん、そうなんだけど、好きに出来ないの。
好きが、生まれると、嫌いが産れてくるから。
サトミ 手に余る、好きなものが、生まれてくると、
手が焼ける、嫌いなものが、埋まれていくの?
マナミ うん、花開いて、風雨多しと、言うでしょ。
好きを、追い求めていると、邪魔が多くなる。
サトミ じゃ、集中力を研くには、どうしたら良いの?
マナミ 好きなものも、嫌いなものも、認めていくの。
嫌なものを、認めないから、邪魔が増えるの。
サトミ もうっ、さっきと逆じゃない、どっちなのよ。
せっかく、やる気になったのに、台無しだわ。
マナミ ほらね、月に叢雲、花に風と、言うでしょ。
サトミ ……………………
CASE 断念なき執念 と 執念なき断念
サトミ 執念と断念、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 徳が崩れる、執念って、どういうものかな?
メグミ 執念とは、溶くを以って、良くに至ることよ。
サトミ 欲が壊れる、断念って、どういうものかな?
メグミ 断念とは、良くを持って、飽くに到ることよ。
サトミ 執念を望み、断念に臨まないと、どうなるの?
メグミ 断念なき執念なんて、唯の怨念に過ぎないよ。
サトミ じゃ、飽くなき良くは、良くに徹するのかな?
メグミ そうよ、良くが過ぎると、良くが倦んでくる。
サトミ 断念を望み、執念に臨まないと、どうなるの?
メグミ 執念なき断念なんて、只の絶念に過ぎないよ。
サトミ じゃ、良くなき飽くは、飽くに徹するのかな?
メグミ そうよ、飽くが過ぎると、飽くに飽いてくる。
サトミ 執念だけでは、欲を追って、悪に負われて、
断念ばかりでは、悪を負って、欲を追わない。
メグミ うん、執念と断念、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、断念を究め、執念を極めていくの?
メグミ そうなの、執念を超え、断念を越えていくの。
サトミ ……………………!!