第三章 第四五話 対話編
CASE 正念 の裏に 邪念
マナミ 正に念じる、正念って、どういうものなの?
マサシ 正念とは、在りのままに、現在に臨むことさ。
マナミ つまり、好きも念じるけど、嫌いも念じるの?
マサシ そうだよ、解くを以って、空間を受け容れる。
マナミ 自然に、陽に臨んだり、陰に臨んだりするの?
マサシ うん、矛盾が洗われ、思いのままになるのさ。
マナミ つまり、在りのままが、想いのままになるの?
マサシ そうだね、念が和し合い、念が強くなるのさ。
マナミ 邪に念じる、邪念って、どういうものなの?
マサシ 邪念とは、思いのままに、未来を望むことさ。
マナミ つまり、好きは念じるけど、嫌いは念じない?
マサシ そうだよ、良くを持って、時間を突き詰める。
マナミ 自侭に、陽を望んだり、陰を望んだりするの?
マサシ うん、矛盾が現われ、思いのままにならない。
マナミ つまり、思いのままが、想いのままじゃない?
マサシ そうだね、念が刻し合い、念が弱くなるのさ。
マナミ そっか、正念と邪念は、全く逆のものだけど、
それぞれ、教えて貰って、良く解かって来た。
マサシ まさに、それこそが、正しく念じた証なのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 正念 の先に 邪念
サトミ 正しい集中、正念って、どういうものかな?
メグミ 正念とは、現在に集めて、念を合せることよ。
サトミ 今の瞬間に、実感が集ると、どうなるのかな?
メグミ 現在の実感が、現実感として、現れて来るよ。
サトミ 現を以って、実を重ねると、どうなるのかな?
メグミ 何が起きても、自然であると、受け容れるよ。
サトミ 邪まな集中、邪念って、どういうものかな?
メグミ 邪念とは、現在を離れて、念を散らすことよ。
サトミ 今の瞬間が、実感を失うと、どうなるのかな?
メグミ 過去や未来に、幻想感として、漏れて行くよ。
サトミ 夢を持って、虚を重ねると、どうなるのかな?
メグミ 何が起きても、自然でないと、受け容れない。
サトミ そうなると、受け容れるか、受け容れないか、
これって、何が起きるかとは、関係がないの?
メグミ そうよ、正しく念じれば、何でも受け容れて、
逆に、邪まに念じれば、何でも受け容れない。
サトミ う~ん、瞬間瞬間の、積み重ねが大事であり、
原因とか、結果とかは、関係がないってこと?
メグミ うふっ、因果を聞いても、受け容れられない?
サトミ ……………………
CASE 正念 という 邪念
サトシ 念が増える、正念って、どういうものかな?
アツシ 正念とは、先に捕えると、後で捉えることだ。
サトシ 過去に、選んでいると、後で択び易くなるの?
アツシ 捉えれば、囚われるほど、念の力が強くなる。
サトシ つまり、Aを念じるときに、Bを念じないの?
アツシ 少しずつ、雑念が落ちて、集中力が培われる。
サトシ 念が減じる、邪念って、どういうものなの?
アツシ 邪念とは、先に棄てると、後で捨てることだ。
サトシ 以前に、選んでないと、後で択び難くなるの?
アツシ 避ければ、裂かれるほど、念の力が弱くなる。
サトシ つまり、Aを念じるときに、Bを念じるの?
アツシ 少しずつ、雑念が湧いて、集中力が損われる。
サトシ そっか、同じ物を念じれば、念が強くなり、
逆に、違う物を念じれば、念が弱くなるのか。
アツシ そうだ、集中の力とは、特別なものじゃない。
ただ、何を優先するのか、記録されるだけだ。
サトシ う~ん、単純だけれど、曖昧じゃないんだね。
集中力は、選択の積み重ね、その成果なんだ。
アツシ そうだ、正しく念じれば、邪に念じられない。
サトシ ……………………!!
CASE 邪念なき正念 と 正念なき邪念
サトミ 正念と邪念、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 今を念じる、正念って、どういうものかな?
メグミ 正念とは、現在に即して、現実に臨むことよ。
サトミ 他を念じる、邪念って、どういうものかな?
メグミ 邪念とは、現在を外して、幻想を望むことよ。
サトミ 正念を望み、邪念に臨まないと、どうなるの?
メグミ 邪念なき正念なんて、唯の丹念に過ぎないよ。
サトミ じゃ、今を念じながら、他を念じないのかな?
メグミ そうよ、他を念じないと、抜け出すだけだよ。
サトミ 邪念を望み、正念に臨まないと、どうなるの?
メグミ 正念なき邪念なんて、只の妄念に過ぎないよ。
サトミ じゃ、他を念じながら、今を念じないのかな?
メグミ そうよ、今を念じないと、巻き込むだけだよ。
サトミ 正念だけでは、現を念じて、通り過ぎるし、
邪念ばかりでは、幻を念じて、嵌り過ぎるの?
メグミ うん、正念と邪念、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、邪念を究め、正念を極めていくの?
メグミ そうなの、正念を超え、邪念を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 専念 の裏に 余念
マナミ 念を狭める、専念って、どういうものなの?
マサシ 専念とは、対象を決めて、欲を念じることさ。
マナミ 念を広げる、余念って、どういうものなの?
マサシ 余念とは、対象を定めず、欲を念じることさ。
マナミ 専念にしても、余念にしても、欲を念じるの?
マサシ そうさ、思いのまま念じて、欲を適えるのさ。
マナミ 欲を適えるには、どのように、願えば良いの?
マサシ 幾つも願わず、一つだけ願うと、適い易いよ。
マナミ 一つだけ願うと、適い易いのって、どうして?
マサシ Aを願って、非Aを望まないと、どうなる?
マナミ 自ずから、Aに臨むようになると、思うけど。
マサシ Aを願って、非Aも望むならば、どうなる?
マナミ 自ずから、Aには臨めなくなると、想うけど。
マサシ Aを願って、Bも望んでいると、どうなる?
マナミ 非Aには、Bが含まれるから、臨めなくなる。
マサシ そうさ、だから、願う時は、絞る方が良いよ。
マナミ じゃ、適わない時の為に、色々と願うのって、
願いを適えるどころか、敵わなくしているの?
マサシ うん、すでに敵わないと、認めているからね。
マナミ ……………………!!
CASE 専念 の先に 余念
サトミ 対象を絞る、専念って、どういうものかな?
メグミ 専念とは、一つに決めて、集中することだよ。
サトミ 対象が散る、余念って、どういうものかな?
メグミ 余念とは、一つに極めず、集中することだよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことなの?
メグミ 念の対象を、Aに絞ると、どうなると思う?
サトミ 非Aに臨むか、Aに臨むか、どちらかになる。
メグミ 念の対象に、Bも入ると、どうなると想う?
サトミ 非Bに臨むか、Bに臨むか、どちらかになる。
メグミ 非Aとして、Bを見ると、どうなると思う?
サトミ Bという、非Aに臨むから、Aに臨めないね。
メグミ 非Bとして、Aを見ると、どうなると想う?
サトミ Aという、非Bに臨むから、Bに臨めないね。
メグミ つまり、Aにせよ、Bにせよ、適い難くなる。
サトミ AとBを、無意識に、繋げてしまうわけか。
望みを、叶えたいなら、絞った方が良いのね。
メグミ 無意識に、繋げないなら、構わないんだけど。
サトミ そっか、優先順位を付けて、関連付けるのね。
メグミ そもそも、その為にこそ、余念を抱くからね。
サトミ ……………………!!
CASE 専念 という 余念
サトシ 将来、スポーツの選手に、僕は為りたいんだ。
メグミ 心から、念じていれば、何でも適う筈なのよ。
サトシ 為るなら、野球が良いか、卓球が良いかなあ。
メグミ 彼方は、両方に成りたいと、思っているの?
サトシ 僕は、どちらであろうと、為れたら良いんだ。
メグミ う~ん、心から念じるなら、一つに絞ってね。
絞らずに、幾つも念じるなら、刻し合うから。
サトシ 互いに、打ち消し合うって、どういうこと?
メグミ あなたは、野球の選手に、為れるのならば、
掛け持ちで、卓球の選手に、成りたいのかな?
サトシ ううん、為りたくないよ、実際に不可能だよ。
メグミ ほら、望んでいる様で、心から望んでいない。
サトシ つまり、複数を望み、保険を掛けたようで、
現実的に、無理だから、足を引っ張っただけ?
メグミ そうよ、無意識の思いは、意外な程に強いの。
サトシ それなら、予想外の想いを、逆手に取って、
野球と卓球、どちらにも、成ってみようかな。
メグミ うふっ、それにしても、心から念じてないね。
さっきと、言っていること、違っているもん。
サトシ ……………………
CASE 余念なき専念 と 専念なき余念
サトミ 専念と余念、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 一つに絞る、専念って、どういうものかな?
メグミ 専念とは、対象を決めて、狭く念じることよ。
サトミ 幾つか余る、余念って、どういうものかな?
メグミ 余念とは、対象を極めず、広く念じることよ。
サトミ 専念を望み、余念に臨まないと、どうなるの?
メグミ 余念なき専念なんて、唯の入念に過ぎないよ。
サトミ じゃ、狭く念じるけど、広く念じないのかな?
メグミ そうよ、細かく捕えても、大きく捉えないよ。
サトミ 余念を望み、専念に臨まないと、どうなるの?
メグミ 専念なき余念なんて、只の雑念に過ぎないよ。
サトミ じゃ、広く念じるけど、狭く念じないのかな?
メグミ そうよ、大きく捉えても、細かく捕えないよ。
サトミ 専念だけでは、絞り過ぎて、何も見えないし、
余念ばかりでは、被り過ぎて、良く見えない。
メグミ うん、専念と余念、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、余念を究め、専念を極めていくの?
メグミ そうなの、専念を超え、余念を越えていくの。
サトミ ……………………!!