第三章 第四八話 対話編
CASE 観念 の裏に 諦念
マナミ 明らめること、観念って、どういうものなの?
マサシ 観念とは、欲を持って、良くを念じることさ。
マナミ 思いのまま、突き詰めて、念じることなの?
マサシ そうだよ、Aを念じようと、非Aを念じない。
マナミ 諦らめること、諦念って、どういうものなの?
マサシ 諦念とは、徳を以って、解くを念じることさ。
マナミ 在りのまま、受け容れて、念じることなの?
マサシ そうだよ、Aを念じただけ、非Aを念じるよ。
マナミ Aであるという、観念を作ると、どうなるの?
マサシ 繰り返すほど、観念が偏って、安定的になる。
マナミ Aでないという、観念に会うと、どうなるの?
マサシ 迫り来るほど、観念が崩れて、動揺的になる。
マナミ 繰り返し観念が、衝突し合うと、どうなるの?
マサシ Aでもあり、非Aでもあると、諦念するのさ。
マナミ 最終的に、いかなる観念も、諦念に向かうの?
マサシ いくら、堅固なる観念を、造り上げようと、
相応しい、強固なる観念で、打ち壊されるよ。
マナミ これは、わたしにとって、衝撃的な事実なの。
マサシ 作り上げた、観念が強いと、そう観じるのさ。
マナミ ……………………
CASE 観念 の先に 諦念
サトミ 色なるもの、観念って、どういうものかな?
メグミ 観念とは、偏りを持って、念じることなのよ。
サトミ 空なるもの、諦念って、どういうものかな?
メグミ 諦念とは、偏りを戻して、念じることなのよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
メグミ Aであるけど、非Aではないと、思い込むと、
Aを前提とする、観念の世界が造り上がるの。
サトミ Aという、偏った世界観が、作り上がるのね。
メグミ 同様に、BやCについて、選び取って行けば、
色々な世界観が、作り上がると、思うでしょ?
サトミ Bに関してはBで、Cに関しては非Cとか、
無限の世界観が、造り上げられると、想うよ。
メグミ こうして、作り上げた観念を、打ち壊すには、
それぞれに、反対の観念を、合わせて行くの。
サトミ 例えば、AとBと非Cで、造り上げた世界は、
それぞれ、非Aと非BとCを、合せて行くの?
メグミ そうよ、そうしていくと、空に還って行くの。
サトミ もう、気が遠くなっちゃう、信じられないよ。
メグミ うふっ、そんなものかなって、観じておいて。
サトミ ……………………
CASE 観念 という 諦念
サトシ 僕だって、実体の無い、空を悟ってみたい。
マサシ 気軽に、言っているけど、本気で望んでいる?
サトシ うん、覚悟しているよ、どうすれば良いの?
マサシ じゃあ、Aと非Aを見て、等しく捉えるのさ。
サトシ それなら、嫌な人が居たら、どうするのかな?
マサシ 好きな人と、同じぐらい、大切にすれば良い。
サトシ それなら、お腹が空いたら、どうするのかな?
マサシ 空かないと、思い込んで、気にしないことさ。
サトシ なるほど、これぐらいなら、僕にも出来そう。
本当に、空を悟るのって、この程度なのかな?
マサシ 君が、辿り着ける空は、この程度だと思うよ。
君から、聞かれた範囲で、応えただけだから。
サトシ えっ、そう言う事なら、悟りに深さがあるの?
マサシ そうさ、今まで君が、思い付いたことが無い、
大いなる、観念の先に、大いなる諦念が有る。
サトシ 空って、僕の予想を、遥かに上回っているの?
マサシ うん、今の君の悟りは、入り口に過ぎないよ。
サトシ う~ん、ということなら、僕には無理かな。
マサシ ほら、先の自分と今の自分、等しく見るのさ。
サトシ ……………………!!
CASE 諦念なき観念 と 観念なき諦念
サトミ 観念と諦念、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 色を付ける、観念って、どういうものかな?
メグミ 観念とは、思いのままに、色を塗ることだよ。
サトミ 色が消える、諦念って、どういうものかな?
メグミ 諦念とは、在りのままに、色を落すことだよ。
サトミ 観念を望み、諦念に臨まないと、どうなるの?
メグミ 諦念なき観念なんて、先入観に過ぎないよ。
サトミ じゃ、明らめるだけで、諦らめないのかな?
メグミ そうよ、色を落さないと、空を悟れないのよ。
サトミ 諦念を望み、観念に臨まないと、どうなるの?
メグミ 観念なき諦念なんて、無見解に過ぎないよ。
サトミ じゃ、諦らめるだけで、明らめないのかな?
メグミ そうよ、色を塗らないと、空が解らないのよ。
サトミ 観念だけは、落さないから、悟れなくなり、
諦念ばかりは、塗らないから、解らなくなる?
メグミ うん、観念と諦念、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、諦念を究め、観念を極めていくの?
メグミ そうなの、観念を超え、諦念を越えていくの。
サトミ ……………………!!