物語編
第三章 第五十話 物語編
第三章 坐禅 と 動禅
第五十話 坐して念じる と 動いて念じる
「我は、小さな器に対して、不偸盗の戒を説く。
汝は、大いなる器に向かって、不偸盗の戒を解け。
つまり、個の為には偸むな、公の為には盗めと解け。」
「法徳よ、我が為に偸んだなら、如何なるのか。」
『我が師よ、他の財を捕れば、我が財が獲られる。
掠め合う、害が増えて逝くから、総じて害が殖える。』
「法徳よ、我が為に偸まないと、如何なるのか。」
『我が師よ、他の財を守れば、我が財も護られる。
奪い合う、害が減って行くから、総じて利が増える。』
「法徳よ、他の為に盗まないと、如何なるのか。」
『我が師よ、財が有る所から、税を取れなくなる。
財が有る所に集まるが、財が無い所には集まらない。』
「法徳よ、他の為に盗んだなら、如何なるのか。」
『我が師よ、財が有る所から、税を取れるだろう。
財が有る所から奪い取り、財が無い所に分け与える。』
「個の為には、偸まない法が、善かったものが、
公の為になると、盗まない方が、悪くなっていく。
この絡繰りは、修めても気づかず、治めて気づける。」
「それゆえ、欲が深い者から、財を取り上げよ。
財を望む者が、罪に臨んでいる、罠を作り上げよ。
巻き上げた財で、救世主を迎える、神の社を建てよ。」