物語編
第三章 第五三話 物語編
第三章 有垢 と 無垢
第五三話 迷妄を捕える と 仏性を捉える
「我は、小さな器に対して、不妄語の戒を説く。
汝は、大いなる器に向かって、不妄語の戒を解け。
つまり、個の為には欺くな、公の為には瞞けと解け。」
「法徳よ、我が為に欺いたなら、如何なるのか。」
『我が師よ、言と霊が乖離し、言の力が弱くなる。
話したことが、現実に変わらず、幻想に溺れていく。』
「法徳よ、我が為に欺かないと、如何なるのか。」
『我が師よ、言と霊が一致し、言の力が強くなる。
話したことが、現実に変わって、真実に覚めていく。』
「法徳よ、他の為に瞞かないと、如何なるのか。」
『我が師よ、善き者も悪しき者も、力が強くなり、
邪まなる力で、世界が破滅する、恐れが現れてくる。』
「法徳よ、他の為に瞞いたなら、如何なるのか。」
『我が師よ、善き者も悪しき者も、力が弱くなり、
愚かなる力で、世界が滅亡する、怖れが消えていく。』
「個の為には、欺かない法が、善かったものが、
公の為になると、瞞かない方が、悪くなっていく。
この絡繰りは、修めても気づかず、治めて気づける。」
「それゆえ、霊を語る者から、力を取り上げよ。
神を語る者が、神を騙っている、罠を作り上げよ。
神の意を解さず、人の言を介する、神の言を預けよ。」