第三章 第五二話 対話編
CASE 掉挙 の裏に 昏沈
マナミ ウッダッチャ、掉挙は、どういうものなの?
マサシ 掉挙とは、良くを持って、心が焦ることだよ。
マナミ 欲を持つと、どうして、心が昂ってしまうの?
マサシ そもそも、良くとは、現在に不足を感じて、
未来に、充足を観じる、仕組みだからなのさ。
マナミ 現在から、意識が外れて、未来に向かうの?
マサシ そうさ、未来を望む余りに、気が急いていく。
マナミ スティヤーナ、昏沈は、どういうものなの?
マサシ 昏沈とは、飽くを以って、心が沈むことだよ。
マナミ 欲を持つと、どうして、心が悔んでしまうの?
マサシ そもそも、飽くとは、現在に不満を感じて、
過去に、満足を観じる、仕組みだからなのさ。
マナミ 現在から、意識が外れて、過去に向かうの?
マサシ そうさ、過去を望む余りに、気が塞いでいく。
マナミ 当に出来ない、未来に望めば、気が急いて、
後戻り出来ない、過去に望めば、気が塞ぐの?
マサシ 浮きと沈みは、欲を持つ者の、定めなのさ。
マナミ 良くなんて、持たなければ、良かったのかも。
マサシ そうして、塞がなくても、今に臨めば良いよ。
マナミ ……………………!!
CASE 掉挙 の先に 昏沈
サトミ 昂っている、掉挙って、どういうものかな?
メグミ 掉挙とは、下に臨めずに、上を望むことだよ。
サトミ 欲を持って、上だけ見ると、どうなるのかな?
メグミ 下は悪く、上ほど良いと、思うようになるよ。
サトミ 現実を見ず、とにかく、上が良いと考えるの?
メグミ そうだよ、現実の世界に、良い物が有っても、
それを、認められないから、急き込むだけよ。
サトミ 塞いでいる、昏沈って、どういうものかな?
メグミ 昏沈とは、上に臨めずに、下を望むことだよ。
サトミ 欲を以って、下だけ見ると、どうなるのかな?
メグミ 上は悪く、下ほど良いと、想うようになるよ。
サトミ 現実を見ず、とにかく、下が良いと考えるの?
メグミ そうだよ、現在の瞬間に、良い事が在っても、
それを、認められないから、落ち込むだけよ。
サトミ じゃ、急き込むにしても、落ち込むにしても、
現実を、認めないから、推し進めてしまうの?
メグミ うん、現在を良く見れば、欲は落ち着くのよ。
サトミ そっか、欲の使い方を、工夫すれば良いのね。
メグミ こうして、論を辿っても、今に集中できるよ。
サトミ ……………………!!
CASE 昏沈なき掉挙 と 掉挙なき昏沈
サトミ 掉挙と昏沈、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 良くに昂る、掉挙って、どういうものかな?
メグミ 掉挙とは、煩悩を持って、心が焦ることだよ。
サトミ 飽くに沈む、昏沈って、どういうものかな?
メグミ 昏沈とは、煩悩を以って、心が塞ぐことだよ。
サトミ 掉挙を望み、昏沈に臨まないと、どうなるの?
メグミ 昏沈なき掉挙なんて、出口を望まないだけよ。
サトミ じゃ、良くに昂るけど、飽くに沈まないの?
メグミ そうよ、飽くが無いから、解くに対えないよ。
サトミ 昏沈を望み、掉挙に臨まないと、どうなるの?
メグミ 掉挙なき昏沈なんて、出離に臨めないだけよ。
サトミ じゃ、飽くに沈むけど、良くに昂らないの?
メグミ そうよ、良くが無いから、解くに向えないよ。
サトミ 掉挙だけでは、気が無くて、抜け出せないし、
昏沈ばかりでは、力が無くて、抜け出せない?
メグミ うん、掉挙と昏沈、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、昏沈を究め、掉挙を極めていくの。
メグミ そうなの、掉挙を超え、昏沈を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 躁 の裏に 鬱
サトミ あ~あ、鬱になっちゃう、もう、死にたい!
マナミ 口の先では、死にたいって、言っていても、
心の奥底では、生きたいって、思っているの。
サトミ 落ち込んで、死にたいのに、そんな訳ないわ!
マナミ そもそも、焦らないなら、沈んでいかないの。
生きたいと、思い込むから、落ち込んでるの。
サトミ それなら、生きたいって、思わなくて良いの?
自殺は、絶対に駄目だって、言われていたよ。
マナミ うん、自殺は良くないけれど、生きなきゃと、
焦って、死にたくなるなら、思わなくて良い。
サトミ それなら、死ぬまいって、想わなくて良いの?
マナミ 深く考えず、死ぬまで、生きているだけなの。
サトミ そんなの、当たり前だよ、拍子抜けしちゃう。
何も構えず、生きていれば、良いだけなのね。
マナミ そうなの、難しくないの、これが普通なの。
サトミ これで、本当に良いのかな、気楽に過ぎない?
マナミ ほら、焦って来たでしょ、それこそ、躁なの。
サトミ やはり、違うんでしょ、おかしいと思ったわ!
マナミ ほら、沈んで来たでしょ、それこそ、鬱なの。
サトミ ……………………
CASE 躁 の先に 鬱
サトミ 最近、鬱になる人が多いのは、どうしてかな?
メグミ それは、躁になってしまう人が、多いからよ。
サトミ 最近、躁になる人が多いのは、どうしてかな?
メグミ それは、鬱になってしまう人が、多いからよ。
サトミ こらこら、説明になってない、お見通しだよ。
メグミ あれれ、ばれてしまったか、説明し直すね。
どちらも、報道の仕方が、おかしいからだよ。
サトミ う~ん、最近の報道の仕方、どこがおかしい?
メグミ 世の人を、煽り立てたり、落ち込ませたり、
事実を、在りのままに、伝えないからなのよ。
サトミ 楽観的で、浮れた情報を流すと、どうなるの?
メグミ 欲が煽られ、心が躁の状態に、なっていくよ。
サトミ 悲観的で、沈んだ情報を流すと、どうなるの?
メグミ 欲が塞がれ、心が鬱の状態に、なっていくよ。
サトミ わざわざ、心を病ませる報道を、何故するの?
メグミ ストレスを、溜めさせるほど、物が売れるの。
サトミ 儲けたいから、病ませるなんて、酷過ぎるわ。
もう報道なんて、信じないし、見たくもない!
メグミ うふっ、落ち着いて、私は、煽っていないよ。
サトミ ……………………!!
CASE 鬱のない躁 と 躁のない鬱
サトミ 躁と鬱、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 浮き立つこと、躁って、どういうものかな?
メグミ 躁とは、外から煽られて、浮び上ることだよ。
サトミ 塞ぎ込むこと、鬱って、どういうものかな?
メグミ 鬱とは、外から抑えられ、沈み込むことだよ。
サトミ 躁を重んじて、鬱を軽んじると、どうなるの?
メグミ 鬱のない躁なんて、単なる鬱に過ぎないよ。
サトミ じゃ、浮び上るばかり、沈み込まないのかな?
メグミ いずれ、疲れ果てるから、塞ぎ込んでいくよ。
サトミ 鬱を重んじて、躁を軽んじると、どうなるの?
メグミ 躁のない鬱なんて、単なる躁に過ぎないよ。
サトミ じゃ、沈み込むばかり、浮び上らないのかな?
メグミ いずれ、持て余ますから、浮き立っていくよ。
サトミ 躁だけは、燥いでいるから、疲れていくし、
鬱ばかりは、抑えているから、腫れてくるの?
メグミ うん、躁と鬱、その両方が、必要になるのよ。
サトミ じゃあ、鬱を究めながら、躁を極めていくの?
メグミ うん、躁を超えながら、鬱を越えていくのよ。
サトミ ……………………!!