物語編
第三章 第五四話 物語編
第三章 応報 と 朗報
第五四話 業に依る報い と 法に拠る報せ
「我は、小さな器に対して、不飲酒の戒を説く。
汝は、大いなる器に向かって、不飲酒の戒を解け。
つまり、個の為には酩うな、公の為には酊えと解け。」
「法徳よ、我が為に酩ったなら、如何なるのか。」
『我が師よ、現実を見とめず、幻想に溺れていく。
酔える時には、楽しめても、覚める時に苦しくなる。』
「法徳よ、我が為に酩わないと、如何なるのか。」
『我が師よ、現実を見とめて、真実に覚めていく。
醒める時には、苦しんでも、覚めた故に嬉しくなる。』
「法徳よ、他の為に酊わないと、如何なるのか。」
『我が師よ、真実を見とめて、幻想を見とめない。
過ちを侵さず、学びが無いため、知恵が生まれない。』
「法徳よ、他の為に酊ったなら、如何なるのか。」
『我が師よ、幻想を見とめて、真実を忘れていく。
過ちを犯して、学びが有るため、知恵が実ってくる。』
「個の為には、酩わない法が、善かったものが、
公の為になると、酊わない方が、悪くなっていく。
この絡繰りは、修めても気づかず、治めて気づける。」
「それゆえ、神に酔う者から、智を取り上げよ。
神に背く者が、神に従っている、罠を作り上げよ。
見とめたくても、見とめられない、神の心を覚えよ。」