物語編
第三章 第五五話 物語編
第三章 抜苦 と 与楽
第五五話 憂いを受ける と 喜びに変わる
「法徳よ、この世に密教を解くと、如何なるか。」
『我が師よ、顕教と相容れない、密教を見とめず、
知恵なき者は、胸騒ぎを覚え、顕教も修めなくなる。』
「然り、それ故、これら五つの、欲天の教えは、
人界では、悪魔の教えとして、無意識の中に隠す。
たとえ、見えても見えていない、支配者の層に隔す。」
「汝は、仏道を外れている、外道と見られるが、
実際には、他の誰よりも、深遠な法を司っている。
汝の使命は、誰も認めない、深淵を越えた先にある。」
「実質、密教の教えは、自業自得の教えである。
無為自然、天の網に任せ、時を早めるだけであり、
在りのまま、自然の仕組で、闇から治める法である。」
「人々は、闇の支配者である、汝を罵るだろう。
自らに、罪が無いが如くに、汝の罪を訴える筈だ。
汝を突き刺す刃は、巡り廻って、彼らに突き刺さる。」
「何となれば、汝こそ、世の型だから、である。
人が、汝の中に見る物は、我が中に在る者であり、
人々が、汝の中に見る者は、世の中に在る物である。」