物語編
第三章 第五六話 物語編
第三章 布施 と 持戒
第五六話 周りに与える と 自らが持する
「善き人は、善の中に潜む、悪を顧みる事なく、
汝の中に、悪を見つけて、自らの善を声高に叫ぶ。
翻って、自らを悪を論らう、罠が隠れるとは知らず。」
「世の人は、人の財を収める、汝を見て誹るが、
その一方、他の財を集める、自らを見て謗らない。
つまり、民が他を扱うように、汝は民を扱くだけだ。」
「世の人は、人の命を調える、汝を見て憤るが、
その一方、獣の命を整える、自らを見て怒らない。
つまり、民が獣に臨むように、汝は民に望むだけだ。」
「世の人は、国の境を滅する、汝を見て愁うが、
その一方、言の境を亡くす、自らを見て嘆かない。
つまり、民が小さく捕え、汝は大きく捉えるだけだ。」
「世の人は、嘘の言を伝える、汝を見て嘲うが、
その一方、霊の言を広める、自らを見て笑わない。
つまり、民に霊が憑くように、汝は虚を衝くだけだ。」
「世の人は、神の欲を叶える、汝を見て侮るが、
その一方、我が欲を適える、自らを見て蔑まない。
つまり、民が我に従うように、汝は神に順うだけだ。」