物語編
第三章 第五七話 物語編
第三章 忍辱 と 精進
第五七話 苦悩に耐える と 苦悩を越える
「即ち、小さな器が、小さな善を積み重ねると、
後に、大きな器となり、大きな善を積む事になる。
実際に、修めた者が見れば、その変化は自然である。」
「しかし、小心翼々、欲の道を辿った事がない、
小さな器から見るなら、大いなる善は大いなる悪、
我が器に収まらない道は、外道の如く見えてしまう。」
「恰も、毒を喰らおうとする、我が子の手から、
叱咤して、毒の実を取り上げる、賢き母親の如く、
たとえ、優しい母でも、子からは、嫌な母に見える。」
「宛ら、親になるまで、親の心は解らない如く、
民は、立場が代わるまで、汝の心を判りはしない。
まさか、入れ替ると知らず、無邪気に親を罵倒する。」
「汝は、欲界随一の親心で、衆生を育て上げる。
それこそ、欲界を創り出した、神の御心と認めて、
主なき世を、神の代理人として、全て見通し治める。」
「更に、大善を積んで、大悪に見られる様から、
善も悪も、実体が無いと、欲の仕掛を解くに至る。
即ち、徳こそ、色界に還る、欲界唯一の出口と悟る。」