物語編
第四章 第一話 物語編
第四章 反射 と 投射
第一話 業が跳ね返る と 業を繰り返す
彼は、高地に旅立つ私に、必要な物を持たせた。
二人で、国境の橋まで赴き、月下で再会を誓う頃、
漸く、時が流れ始めた、恐ろしく長い七日間だった。
私が、老師を訪ねて、道を尋ねる事が無ければ、
師を愛すことも無いし、彼を憎むことも無かった。
死の地に挑んだからこそ、命を享けることが出来た。
私が、謎の夢を見て、道を交える事が無ければ、
彼を許すことも無いし、彼を愛すことも無かった。
敵の側に回ったからこそ、友と認めることが出来た。
繰り返して、跳ね返される、天の力が無ければ、
ここまで、相異なる者が、入り混じることはない。
間違いなく、この宇宙には、何かの力が働いている。
王位に就く彼に、天の教えを解いてしまったが、
私は、禁断の実を、与えてしまったかもしれない。
門外不出にはしたが、秘法を解いても良かったのか。
私は、導師の転生先である、世界の屋根に赴き、
救世主を訪ねて、その是非を尋ねないとならない。
密教を解くべきだったか、確かめなければならない。
もし、過っていれば、その責が問われるだろう。
口だけの教えであれば、その行が課されるだろう。
導師に再会するのが、嬉しくもあり、怖しくもある。