物語編
第四章 第二話 物語編
第四章 凡庸 と 中庸
第二話 両極を避ける と 両極を越える
胸の内に、使命感を抱き、山間部を歩き続けた。
使命を諦めてしまえば、尊い犠牲が無駄になると、
私は、万物を背負った思いで、救世主を探し求めた。
山の雨は、その冷たさで、我が身を切り裂いて、
道なき道は、その険しさで、我が心を打ち砕いた。
それでも、魂を振り絞り、世界の屋根を昇り詰める。
天に近づくにつれ、透き通る青に包まれていく。
その気高い色合いは、恐ろしいほど美しく煌めき、
大気の薄さも相俟って、我が心身が引き締められた。
雪山を幾つも抜けると、眼下に高原が広がった。
見渡す限り、盆地が続いて、村々が点在していた。
こんな高い処に、人が住むことに、感動すら覚える。
山頂から高原に降りて、最初に立ち寄った村で、
救世主が生まれたらしい、という、噂を耳にした。
最近、見たことがない星が、天に輝き始めたと言う。
そう言えば、闇夜の山道を、歩いている時から、
私を先導するかのように、道を照らし出していた。
一際、明るく輝いていたが、あの星が徴だったのか。