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物語編

第四章 第四話 物語編

第四章   入口   と   出口
第四話 良くを説く係 と 飽くを解く係

 

疲れ切った体を、休めることなく、旅を続けた。
星が見える、夜の間は、星の下に近づこうとして、
徴が見えない、昼の間は、人に伝を尋ねようとした。

 

しかし、いくら星の下に、辿り着こうとしても、
近づけば、近づいた分だけ、星は遠のいてしまう。
永遠に、着けないのでは、そんな実感ばかりが募る。

 

真理に近づいて行けば、真理も近づいて来ると、
愚直に思い込んでいたが、星の動きを見るにつけ、
実はそうでないのかと、信念が揺らぐようになった。

 

確かに、真理は求めなければ、与えられないが、
求めているように見えても、心から求めていない。
形だけになっている私を、星は見透かしているのか。

 

私が、体を酷使するのは、疲れ果てた風を装い、
諦めても許される、口実を探したいだけでないか。
苦行という錦の下に、自我を許したいだけでないか。

 

人々が、風評を選んで、得心したいだけの如く、
私も、経過を取り繕って、納得したいだけなのか。
彼らと違うつもりでいたが、彼らと同じではないか。

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