物語編
第四章 第七話 物語編
第四章 善趣 と 悪趣
第七話 味著を究める と 禍患を極める
其処は広いとはいえ、何年も歩き回っていれば、
点在する村々には、あらかた行き尽してしまった。
顔見知りが増えたが、救世主の手掛かりは無かった。
餞に贈られた物は、早々に使い果たしていたが、
児が母を探すが如く、仏陀を探し求める私の姿に、
感銘を受けた人が、訪れる先の村々で助けてくれた。
私が、行った事がある村に、立ち寄りもすれば、
人々が、直ぐに集まって来て、歓声が湧き上がる。
到底、独りで治め切れない、供物に囲まれてしまう。
木の洞の中で瞑想して、休んでいるだけの私を、
人々は有り難がって、祭壇を作り、拝みに訪れる。
形だけの行を拝んでも、何の徳にも、成らないのに。
持ち物を減らしたくて、粗衣に徹している私を、
人々は哀れに思って、着物を織り、捧げに訪れる。
それが、善になるのか、悪になるか、解らないのに。
切る手間を省くために、頭髪を剃っている私を、
人々は清貧に感じて、自らを恥じ、悔いに訪れる。
形に囚われないで、型を悟るまでは、至らないのに。