物語編
第四章 第六話 物語編
第四章 増上 と 卑下
第六話 勝ちを究める と 負けを極める
一年が経ち、二年が過ぎ、三年が過ぎ去ったが、
仏陀どころか、実際に、仏陀に会ったという人に、
私は、ただの一人も、出会うことは出来てなかった。
相変わらず、夜空には、あの星が輝いていたが、
もはや、日常の背景となり、何の感慨も生じない。
無邪気に、あの下を訪ねても、救世主は居ないのだ。
疾うの昔に、肉体も精神も、限界を越えていた。
しかし、最も辛かったことは、時が薄れたことだ。
意味なく、時だけが過ぎ去って、少しも学びが無い。
あの七日の出来事を、頻繁に思い出してしまう。
人類の型を演じた時の、四方から押し寄せて来る、
気高い充実感を、無為に生きる、今の私は望めない。
あろうことか、最近では、あの創世の七日間が、
魔に魅入られただけで、総べて夢ではなかったか、
そんな切な過ぎる思いに、駆られる様になっていた。
先ず、星を見上げても、魂が打ち震えなくなり、
次第に、望みを適えない、星を恨めしく思い始め、
最終的に、そんな怨みさえ、湧き上がらなくなった。