物語編
第四章 第八話 物語編
第四章 受苦 と 離苦
第八話 過患を受ける と 過患を離れる
仏陀を求めている、一介の行者に過ぎない私が、
こともあろうに、仏陀の如く、扱われてしまった。
人々の中にあって、偶像の如く、祀られてしまった。
私から、働き掛けたことは、一度も無かったが、
一人が始めたら、集団に変わるまでは、早かった。
零から壱を創るのは難く、一から二を作るのは易い。
たとえ、神に教わらなくても、私は解っている。
形だけを見て、有り難がる姿は、私に他ならない。
村の人々は、私が演じた如く、演じてくれるだけだ。
夜の天の頂に鎮座して、輝いているだけの星を、
自分は有り難がって、期待を抱き、拝みに訪れる。
形だけの光を拝んでも、何の徳にも、成らないのに。
救世主が降誕されたと、噂しているだけの民を、
自分は憐れに思って、自分は違うと、探して回る。
それは、五十歩なのか、百歩なのかの、違いなのに。
天に対して命を奉げて、天命を果し切った師を、
自分は負い目を感じ、自らを恥じ、悔いに訪ねる。
悔いている限りは、師は現れないと、知ってるのに。