物語編
第四章 第十話 物語編
第四章 独善 と 親善
第十話 我だけに善い と 周りにも善い
実際、私自身は、何も関わらなかったとはいえ、
確実に、周囲には、価値や競争が生じてしまった。
即ち、私を軸とする、大きな気の巡りが生じていた。
近いと、気の流れに乗れて、価値に与かれるが、
遠いほど、気の巡りが滞って、勝ち馬に乗れない。
更に遠いと、気を削ぐばかりで、負け犬に甘んじる。
結果、悪意を抱く人々が、現れるようになった。
表向き、私を信奉する者が、着実に増えるにつれ、
その裏で、仏を憎悪する者が、確実に殖えていった。
〈得体の知れない、余所者が、村に現れてから、
平和だった村が、二つに分れて、敵意が芽生えた。
大人しい顔をして、村始って以来、希代の悪である。〉
私に向けて、朝から晩まで、恨み言が吐かれた。
耳には届いていたが、業が落とされていると思い、
私は気にすることなく、受け流して放置をしていた。
すると、私の祠には、張り紙まで貼られ始めた。
獣の数や、悪魔の目や、決して善い風評ではない。
そして、この光景を、私は、確かに見たことがある。