物語編
第四章 第十一話 物語編
第四章 有漏 と 無漏
第十一話 念が溜らない と 念が漏れない
祠の外に居る人からの、糾弾の声が強くなると、
洞の内に集まる者からの、弁護の声も強くなった。
仏を害す者、誰一人として、入らせまいと息巻いた。
私が、護衛の目的から、世の中と隔されるほど、
私と会える者が厳選され、更に序列が激しくなり、
それに選ばれた者達は、自尊心を持って役に務めた。
おそらく、その誇りを、外に示したいのだろう。
近くに居る者から、順に、赤色、黄色、黒色など、
色の付いた、帽子を被って、差別するようになった。
外から締め付けるほど、中から支え合ったため、
上意下達を徹底した、堅固な組織が出来上がった。
これほどの組織は、外圧が無ければ出来ないはずだ。
老師が、敵として、怒声を上げているものこそ、
前世には、傍にいて、歓声を上げていたものだと、
言っていたが、その意味が、今の私には良く解かる。
何も関らず、黙しているだけ、にもかかわらず、
何処かで見た、懐かしい演技が、繰り広げられる。
我が過去が、自ずから起ち上がる、これこそ縁起か。