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物語編

第四章 第十二話 物語編

第四章    前生   と   後生
第十二話 今の因となる と 今の果となる

 

此の時まで、見事なまでに、前生のままならば、
此の先からも、美事なまでに、前章のままだろう。
業を越えるのは、逆の持ち場を、味わい切った時か。

 

森羅万象は、我が心の表れに、間違いなかった。
捕われず、業が落ち切れば、総て解決するだろう。
囚らわれて、言葉を発すれば、迷いが長引くだけだ。

 

然う考えて、私は、完全なる無言の行に努めた。
是までも、特に話さないで、済んでいたのだから、
今から、全く語らないことも、難しくはないだろう。

 

この部屋に、誰も入らないように、告げ置いて、
私は、岩屋に篭もって、瞑想を続けることにした。
いずれ、幻影が祓われて、涅槃に至れるはずである。

 

無言に徹しながら、外に対して、気を乱さない、
私の気の巡りは、恐ろしいほどに、充実していて、
須臾にして、私は、深い意識の中に、入って行った。

 

深層に潜るほど、自ずから集中が研ぎ澄まされ、
心音は小さくなり、呼吸は長く細くなっていった。
そして、真相に至ると、時の流れが完全に停止した。

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