物語編
第四章 第十三話 物語編
第四章 快苦 と 皆苦
第十三話 転生に向かう と 解脱に向かう
再び、時が押し流された、其の直後の事だった。
激しく、肩を揺さ振られて、私は叩き起こされた。
其処には、会ったことがない、男が独り立っていた。
〈起きろ、我々の間に、雑な挨拶など要らない。
目を覚ませ、愚かな汝に、見せて置かねばならん。
貴様が選んだ、世界が、如何なるものか、篤と見よ。〉
彼に襟首を掴まれ、部屋から引き摺り出された。
此の様な扱いは、久し振りであり、私も驚いたが、
私を信奉する者は、それ以上に、愕き戸惑っていた。
血気に逸る者が、私を援けようと近づいて来た。
しかし、私は、無言のまま、それを手で制止して、
無理やり、引かれないように、毅然と起ち上がった。
男は、振り返りもせず、私の先を進んで行った。
まるで、頭の後ろ側にも、目が付いているが如く、
すべてが、見抜かれている、怪しい感覚を漂わせた。
村を通り過ぎて、暗い夜の山を登って行ったが、
其の間、私と男は、ただの一言も、話さなかった。
長い時間、歩き続け、山の頂に、我々は辿り着いた。