第四章 第十四話 対話編
CASE 皆苦 の裏に 皆楽
マナミ 苦しか無い、皆苦って、どういうものなの?
マサシ 皆苦とは、絶対の苦しみ、楽の無い苦なのさ。
マナミ じゃあ、楽が生まれるとき、苦が産まれるの?
マサシ そうだよ、楽しんだ分は、苦しむことになる。
マナミ それを、明らかに認めると、苦しくなるよね?
マサシ そうだね、そういう訳で、総じて苦になるよ。
マナミ 楽しか無い、皆楽って、どういうものなの?
マサシ 皆楽とは、絶対の楽しみ、苦の無い楽なのさ。
マナミ じゃあ、苦が生まれるとき、楽が産まれるの?
マサシ そうだよ、苦しんだ分は、楽しむことになる。
マナミ それを、明らかに認めると、楽しくなるよね?
マサシ そうだね、そういう訳で、総じて楽になるよ。
マナミ つまり、皆苦が表れて、皆楽も現れること。
即ち、皆空を見とめれば、変えていけるのね。
マサシ そうさ、認めないから、恐々と生きてしまい、
逆に、見とめてしまえば、堂々と活きられる。
マナミ そっか、総じて空であると、認めてしまえば、
どれだけ、苦しみが有っても、空に為るのね。
マサシ そうさ、皆空を悟った人は、輪廻が涅槃だよ。
マナミ ……………………!!
CASE 皆苦 の先に 皆楽
サトミ 苦しか無い、皆苦って、どういうものかな?
メグミ 皆苦とは、空で在るから、苦しか無いことよ。
サトミ 楽しか無い、皆楽って、どういうものかな?
メグミ 皆楽とは、空で在るから、楽しか無いことよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことなの?
メグミ 原理的に、楽しんだだけ、苦しむことになる。
彼方は、そんな仕掛で、楽しむことが出来る?
サトミ 楽しむだけ、苦しむなら、楽しめる訳ないよ。
それで、楽しめるなら、そもそも認めてない。
メグミ 裏返せば、苦しんだだけ、楽しむことになる。
彼方は、そんな仕組で、苦しむことが出来る?
サトミ 苦しむだけ、楽しむなら、苦しめる訳ないよ。
それで、苦しめるなら、そもそも認めてない。
メグミ うん、仕掛を見とめると、皆苦を観じるし、
反対に、仕組を見とめると、皆楽を観じるよ。
サトミ それなら、その表だけを、観じるのではなく、
裏まで、観じるときに、一切皆空になるのね。
メグミ うん、皆空を認めないと、涅槃に留まるけど、
いずれ、皆空を見とめると、輪廻に臨むのよ。
サトミ ……………………!!
CASE 一 切 皆 空
サトシ あのね、一切皆空って、どういうことかな?
マサシ それはね、すべては、空に至るということさ。
サトシ う~ん、実感が無いと、実体も無いわけだし、
今更、言わなくても、当たり前じゃないかな。
マサシ ううん、一切皆空って、そんな話じゃない。
皆空とは、実感が有って、実体が無いんだよ。
サトシ つまり、色が寡いから、空しいではなくて、
どれだけ、色が多くても、空であるってこと?
マサシ そうさ、色を感じても、空を観じてしまう。
すなわち、色で消せない、空こそ皆空なのさ。
サトシ う~ん、そう考えると、凄い気がしてきた。
どうして、空と皆空って、全く異なるのかな?
マサシ 空とは、色が減らしている、空のことであり、
皆空とは、色が増やしている、空のことだよ。
サトシ 空とは、色と空が矛盾する、空のことであり、
皆空とは、空と色が補完する、空のことなの?
マサシ そうさ、色を味わっただけ、空が現れてくる。
サトシ なるほど、色が濃いほど、空が濃くなるのか。
マサシ 当たり前に、感じた物ほど、有り難く観じる。
サトシ ……………………!!
CASE 皆楽なき皆苦 と 皆苦なき皆楽
サトミ 皆苦と皆楽、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 楽の無い苦、皆苦って、どういうものかな?
メグミ 皆苦とは、楽に臨んでも、楽しめないことよ。
サトミ 苦の無い楽、皆楽って、どういうものかな?
メグミ 皆楽とは、苦に臨んでも、苦しめないことよ。
サトミ 皆苦を望み、皆楽に臨まないと、どうなるの?
メグミ 皆楽なき皆苦なんて、小乗の涅槃そのものよ。
サトミ じゃ、楽しむと苦しむ、仕組を見とめるの?
メグミ そうよ、胸に刻み込んで、済度に向わないよ。
サトミ 皆楽を望み、皆苦に臨まないと、どうなるの?
メグミ 皆苦なき皆楽なんて、大乗の涅槃そのものよ。
サトミ じゃ、苦しむと楽しむ、仕組を見とめるの?
メグミ そうよ、胸に刻み込んで、解脱に向わないよ。
サトミ 皆苦だけでは、解脱しても、済度しないし、
皆楽ばかりでは、済度しても、涅槃しないの?
メグミ うん、皆苦と皆楽、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、皆楽を追い、皆苦を負っていくの?
メグミ そうなの、皆苦を透し、皆楽を徹していくの。
サトミ ……………………!!