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物語編

第四章 第十七話 物語編

第四章    欲天   と   色天
第十七話 善だけを救う と 悪までも掬う

 

男は、私と同じ方を向き、人の世界を見渡した。
遠目に、点にしか見えない、地の村の一つ一つに、
近づけば、多くの生活が表れ、多くの人生が現れる。

 

いま、認める魂に限るならば、万を数える民。
これから、現れる魄も含めるなら、億を数える命。
彼らを全て、汝は魂魄を以って、導かねばならない。

 

若し、彼らを救わず、涅槃に至ってしまえば、
自ら、生まれ変わり、彼らを演じなければならん。
彼らが、自らの未来の姿であると、何故気づかない。

 

一方、衆生の生き様を、明日の我が身と捉え、
全身全霊を以って、彼らを輪廻の罠から救うなら、
彼らの人生を通して、汝は命を遂げることが出来る。

 

そうして、我、関せずと、澄ましている限り、
下界に暮らす、人の生き様は、具さに見えないが、
下に降りて近づけば、幾らでも、詳しく見えて来る。

 

このまま、黙り続けて、彼らを見捨てるのか。
どうして、人に塗れて、巷間を這いずり回らない。
たとえ、逃げようと、生まれ変ると、何故解らない。

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