物語編
第四章 第十八話 物語編
第四章 天人 と 菩薩
第十八話 神として説く と 人として解く
私は、何を言われようと、頑なに無言を貫いた。
如何に、迫真の演技で、目の前に現れたとしても、
我が業が、描き出している、幻想の物語に過ぎない。
眼の前に広がっている、この朝の景色にしても、
目の奥まで見据えている、この彼の存在にしても、
幻影に過ぎないのだが、その幻影が斯うして訴える。
〈神を訴えようと、仏を訴えようと、捕われず、
命を訴えようと、全く囚われない、ここ迄は美事。
しかし、其れ故に、涅槃の限界へと、汝は逝き着く。〉
〈はっきり言っておく、一切の邪魔は受けない。
その頑なさ、それこそが、無智そのものと心得よ。
その無智を払わぬ限り、完全なる涅槃など訪れない。〉
〈汝の涅槃は、無智に守られた、涅槃に過ぎず、
無智を使い、自と他の境界を作り、小さく安らう。
何時まで、半端に極まる涅槃に、甘んじる積もりか。〉
〈まさに、此の様にして、私が干渉するが如く、
遠い未来に、他の念を受け、涅槃が崩れるだろう。
無智なら、先に延ばすが、智慧あらば今に見極めよ。〉