物語編
第四章 第十九話 物語編
第四章 邪神 と 正神
第十九話 神として扱う と 人として扱く
〈汝は、私のことを、悪魔と思っているだろう。
涅槃から、輪廻に引き摺り戻す、悪の元凶であり、
仏の道から、行者を引き離す、真理の邪魔であると。〉
〈もとより、この世に、悪魔などは存在しない。
無智な者から見れば、邪魔なる物が表れて来るが、
智慧ある者から見れば、邪悪なる物は現れて来ない。〉
〈汝は、自らの責とせずに、他の責とするのか。
他の責任にしている限り、無智に覆われたままだ。
俺を、悪魔と見なして、地獄に封印し続ける積りか。〉
〈自らが、拒絶したいものは、狂気と断罪する。
自我は、それで安堵するだろう、呑気なものだな。
臭い物に、蓋が出来るのみか、我が安定も得られる。〉
〈自らが、否定したいものを、悪魔と名付ける。
世間は、それで納得するだろう、気楽なものだな。
言い訳に、使用出来るのみか、他の共感も得られる。〉
〈たとえ、百万言を以って、私が語り掛けても、
貴様は、ただの無言を持って、切り捨ててしまう。
一見、拮抗しているようで、智慧の開きは甚だしい。〉
〈これこそ、大乗と小乗の、違いと知るが良い。
あたかも、不毛の砂漠に、水を注ぎ続けるが如く、
たとえ、無駄になろうとも、菩薩は法を説き続ける。〉