物語編
第四章 第二十話 物語編
第四章 自愛 と 他愛
第二十話 心から慈しむ と 他から愛する
たとえ、地が裂けようと、天が落ちて来ようと、
私は、試されていると、黙り続ける覚悟であった。
しかし、そんな姿を見て、男は高らかに笑い始めた。
〈偽なる涅槃を、真の涅槃と、取り違えた者を、
輪廻に引き摺り戻すのは、実に、難儀なものだな。
その上、悪魔と罵られるとは、損な役回りなことよ。〉
〈強情、傲慢も、此処までいくと、清々しいな。
このまま、いっそ、涅槃に放って置いてやろうか。
忘れた頃に、現れて、冷水を頭から掛けてやろうか。〉
〈最初は、捕われないよう、無視を始めたのに、
もはや、無視を続けることに、囚われていないか。
滑稽だな、自らの滑稽ぶりにも、無視を決め込むか。〉
〈無視を選んでも良く、無視を択ばずとも良い。
空に至った、真の涅槃は、どちらも良いが正解だ。
まあ、無視を決め込む、貴様に言っても無駄だがな。〉
〈さて、慣れない冗談は、此処までにしようか。
俺は、あいつと違って、遊びが上手くないからな。
この手は、使いたくなかったが、使わせてもらうぞ。〉