物語編
第四章 第二二話 物語編
第四章 感謝 と 感動
第二二話 心から喜べる と 他から悦べる
〈偏らせた世を元に戻す、これが我らの使命だ。
君が果さないときは、俺が果すことになっている。
君が遂げたいのか、俺が遂げるのか、どちらを選ぶ。〉
私の返事を待つことなく、彼は、このように言った。
〈此処に至って、沈黙を続ける、芥の如き者は、
苦しみ悶える、衆生の世界を、見届けさせるため、
無理やりに、生まれ変らせても、構わないくらいだ。〉
〈しかし、どうしたいか、貴様に選ばせてやる。
この使命は、当事者である、汝が果すべきである。
残念だが、貴様が躓いた時は、俺が身代わりとなる。〉
何処かで見た局面に、私の魂が打ち震え始めた。
この者は、悪魔などでない、いや、悪魔どころか、
ずっと、探し求めていた、救世主そのものでないか。
涅槃に臨んで、自分が、無視を決め込んだから、
済度を望む、救世主まで、無視してしまった訳か。
口だけで、仏陀を望まない、その姿は私だったのか。
仏陀に漸く会えたという、喜びが湧き上がるも、
救世主を無下にしたという、恐れが押さえ付けて、
どちらか一方に偏り切れない、擬かしさが渦巻いた。