第四章 第二十話 対話編
CASE 自愛 の裏に 他愛
マナミ メッター、慈の心って、どういうものなの?
マサシ 慈とは、楽を与えて、魂の上向を願うものさ。
マナミ 我を愛する、自愛って、どういうものなの?
マサシ 慈の心が、自らに対して、向けられたものさ。
マナミ じゃあ、我が身に向け、楽を与えれば良いの?
マサシ いや、それだけだと、楽に溺れて弱くなるよ。
マナミ 自然と、楽になるよう、成長すれば良いの?
マサシ うん、楽が生じるように、善業を重ねるのさ。
マナミ 他を愛する、他愛って、どういうものなの?
マサシ 慈の心が、周りに対して、向けられたものさ。
マナミ じゃあ、他の人に向け、楽を与えれば良いの?
マサシ いや、それだけだと、人に甘えて弱くなるよ。
マナミ 自分で、楽になるよう、成長すれば良いの?
マサシ うん、楽が生じるように、善業を重ねるのさ。
マナミ それなら、自らに対しても、周りに対しても、
成長を促す、菩薩の慈こそが、菩提の心なの?
マサシ そうさ、助けるだけでは、頼り切るだけだよ。
マナミ ひたすら、慈の心を培うと、何が見えるの?
マサシ 苦と楽、総じて創り出す、梵天が見えるのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 自愛 の先に 他愛
サトミ 内を慈しむ、自愛って、どういうものかな?
メグミ 自愛とは、自らに対して、楽を与えることよ。
サトミ 外を愛する、他愛って、どういうものかな?
メグミ 他愛とは、周りに向って、楽を与えることよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
メグミ じゃ、自愛を抱かず、慈愛と言えると思う?
サトミ ううん、そんな慈では、装った愛になるだけ。
自ずから、愛さなければ、直ぐ飢えてしまう。
メグミ じゃ、他愛を擁かず、慈愛と言えると想う?
サトミ ううん、そんな慈では、偏った愛になるだけ。
周りまで、愛さなければ、直ぐ飽いてしまう。
メグミ つまり、我が楽も他の楽も、積み上げるもの。
そういう、自愛が生まれ、他愛が産まれるの。
サトミ そっか、自愛を怠れば、他愛も研けないし、
逆に、他愛を惰れば、自愛も磨けないわけね。
メグミ そうよ、自愛と他愛が、慈愛を蘇らせるし、
引いては、瞋恚が癒えて、平安を甦らせるの。
サトミ 怒りの心は、慈愛を培えば、消えていくのね。
メグミ 良くを慈しみ、良くを育めば、癒えていくよ。
サトミ ……………………!!
CASE 自愛 という 他愛
サトシ 危める思い、瞋恚って、どういうものかな?
アツシ 瞋恚とは、煩悩を持って、欲界に至る心だな。
サトシ 怒りの心に、捕らわれると、欲界に堕するの?
アツシ そうだな、自他に塗れて、衆生の世界になる。
サトシ 愛する想い、慈愛って、どういうものかな?
アツシ 慈愛とは、菩提を以って、色界に到る心だな。
サトシ 愛する心を、培っていると、色界に脱するの?
アツシ そうだな、自他を越えて、菩薩の世界になる。
サトシ 内なる慈愛、自愛って、どういうものかな?
アツシ 自愛とは、慈愛を持って、我を慈しむことだ。
サトシ 内を慈しみ、外を愛さないと、どうなるの?
アツシ 自ずから、自と他が分れて、怒りが深くなる。
サトシ 外なる慈愛、他愛って、どういうものかな?
アツシ 他愛とは、慈愛を以って、他を愛することだ。
サトシ 外を慈しみ、内を愛さないと、どうなるの?
アツシ 自ずから、自と他が別れて、怒りが強くなる。
サトシ そっか、菩提を以って、煩悩を持っていたら、
本末転倒、というか、本当に困ったものだよ。
アツシ 確かに、そうだが、そこは、怒っては駄目だ。
サトシ ……………………!!
CASE 他愛なき自愛 と 自愛なき他愛
サトミ 自愛と他愛、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 我を慈しむ、自愛って、どういうものかな?
メグミ 自愛とは、慈の心が、内に湧き出すものだよ。
サトミ 他を愛する、他愛って、どういうものかな?
メグミ 他愛とは、慈の心が、外に溢れ出るものだよ。
サトミ 自愛を望み、他愛に臨まないと、どうなるの?
メグミ 他愛なき自愛なんて、偏った慈に過ぎないよ。
サトミ じゃ、我を慈しむけど、他を愛さないのかな?
メグミ いずれ、他を悪むように、我を憎んでしまう。
サトミ 他愛を望み、自愛に臨まないと、どうなるの?
メグミ 自愛なき他愛なんて、騙った慈に過ぎないよ。
サトミ じゃ、他を愛するけど、我を慈しまないの?
メグミ いずれ、我を憎むように、他を悪んでしまう。
サトミ 自愛だけは、偏ってしまい、憎んでいくし、
他愛ばかりは、騙ってしまい、悪んでいくの?
メグミ うん、自愛と他愛、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、他愛に依り、自愛に拠っていくの?
メグミ そうなの、自愛を究め、他愛を極めていくの。
サトミ ……………………!!