第四章 第二二話 対話編
CASE 感謝 の裏に 感動
マナミ ムディター、喜の心は、どういうものなの?
マサシ 喜とは、受け容れて、魂の存在を喜ぶものさ。
マナミ 自ずと歓ぶ、感謝って、どういうものなの?
マサシ 喜の心が、自らに対して、向けられたものさ。
マナミ じゃあ、嬉しいことを、喜んで居れば良いの?
マサシ いや、それだけだと、喜が消えると終わるよ。
マナミ 何事も、喜べるように、感謝すれば良いの?
マサシ うん、善い事も悪い事も、有り難く思うのさ。
マナミ 他まで歓ぶ、感動って、どういうものなの?
マサシ 喜の心が、周りに対して、向けられたものさ。
マナミ じゃあ、親しいものと、分かち合えば良いの?
マサシ いや、それだけだと、縁が切れると終わるよ。
マナミ 何人も、喜べるように、感謝すれば良いの?
マサシ うん、良き友も好き敵も、在り難く想うのさ。
マナミ それなら、自らに対しても、周りに対しても、
感謝を促す、菩薩の喜こそが、菩提の心なの?
マサシ そうさ、徒に浮かれても、落ち込むだけだよ。
マナミ ひたすら、喜の心を培うと、何が見えるの?
マサシ 美と醜、総じて清らかな、浄天が見えるのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 感謝 の先に 感動
サトミ 内を歓べる、感謝って、どういうものかな?
メグミ 感謝とは、自らに対して、命を感じることよ。
サトミ 外を喜べる、感動って、どういうものかな?
メグミ 感動とは、周りに向って、命を感じることよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
メグミ じゃ、感謝を抱かず、歓喜と言えると思う?
サトミ ううん、そんな歓びは、薄れる喜になるだけ。
有り難く、感じなければ、当たり前になるよ。
メグミ じゃ、感動を擁かず、歓喜と言えると想う?
サトミ ううん、そんな歓びは、驕れる喜になるだけ。
世に遍く、感じなければ、独り善がりになる。
メグミ つまり、我が命も他の命も、在り難いもの。
そういう、感謝が生まれ、感動を産まれるの。
サトミ そっか、感謝を怠れば、感動も研けないし、
逆に、感動を惰れば、感謝も磨けないわけね。
メグミ そうよ、感謝と感動が、歓喜を蘇らせるし、
引いては、憂愁が癒えて、功徳を甦らせるの。
サトミ 憂いの心は、歓喜を培えば、消えていくのね。
メグミ 全てを喜んで、総て称えれば、癒えていくよ。
サトミ ……………………!!
CASE 感謝 という 感動
サトシ 否める思い、憂鬱って、どういうものかな?
アツシ 憂鬱とは、煩悩を持って、欲界に至る心だな。
サトシ 憂いの心に、捕らわれると、欲界に堕するの?
アツシ そうだな、自他に塗れて、衆生の世界になる。
サトシ 認める想い、歓喜って、どういうものかな?
アツシ 歓喜とは、菩提を以って、色界に到る心だな。
サトシ 嬉しい心を、培っていると、色界に脱するの?
アツシ そうだな、自他を越えて、菩薩の世界になる。
サトシ 内なる歓喜、感謝って、どういうものかな?
アツシ 感謝とは、歓喜を持って、我を歓べることだ。
サトシ 内を歓んで、外を喜ばないと、どうなるの?
アツシ 自ずから、自と他が分れて、憂いが深くなる。
サトシ 外なる歓喜、感動って、どういうものかな?
アツシ 感動とは、歓喜を以って、他を喜べることだ。
サトシ 外を歓んで、内を喜ばないと、どうなるの?
アツシ 自ずから、自と他が別れて、憂いが強くなる。
サトシ そっか、菩提を以って、煩悩を持っていたら、
本末転倒、というか、本当に悩ましいものだ。
アツシ 確かに、そうだが、そこは、受け容れてやれ。
サトシ ……………………!!
CASE 感動なき感謝 と 感謝なき感動
サトミ 感謝と感動、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 我を歓べる、感謝って、どういうものかな?
メグミ 感謝とは、喜の心が、内に湧き出るものだよ。
サトミ 他を喜べる、感動って、どういうものかな?
メグミ 感動とは、喜の心が、外に溢れ出るものだよ。
サトミ 感謝を望み、感動に臨まないと、どうなるの?
メグミ 感動なき感謝なんて、偏った喜に過ぎないよ。
サトミ じゃ、我を歓べるけど、他を喜べないのかな?
メグミ そうよ、他を愁うように、我を憂いてしまう。
サトミ 感動を望み、感謝に臨まないと、どうなるの?
メグミ 感謝なき感動なんて、騙った喜に過ぎないよ。
サトミ じゃ、他を喜べるけど、我を歓べないのかな?
メグミ そうよ、我を憂うように、他を愁いてしまう。
サトミ 感謝だけは、偏ってしまい、憂いていくし、
感動ばかりは、騙ってしまい、愁いていくの?
メグミ うん、感謝と感動、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、感動に依り、感謝に拠っていくの?
メグミ そうなの、感謝を究め、感動を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 慇 懃 無 礼
メグミ 先生の才能は、本当に素晴らしいと思います。
天才ですね、私なんか、足元にも及びません。
マコト そういう、口だけの称賛なんて、要らないわ。
メグミ う~ん、本心で言ってますが、何故ですか?
マコト 本心なら、私なんかなんて、言わないはずよ。
メグミ う~ん、謙遜で言ってますが、何故ですか?
マコト 心の底から、有り難いと、思っているなら、
本心から、斯く在りたいと、想うはずでしょ。
メグミ 自分も、そうなりたいと、思っていない限り、
表面的な、世辞に過ぎない、ってことですか?
マコト その言葉に、感謝も無ければ、感動も無いわ。
メグミ つまり、謙遜をしてしまえる、ということは、
どこかで、遠慮をしてしまえる、ということ?
マコト そうよ、上に捕えて、謙っているようでも、
どこかで、下に捉えて、白けているだけなの。
メグミ わたし、知らないうちに、間違っていました。
先生には、失礼を犯し、顔向けが出来ません。
マコト そんな、口だけの謝罪は、全く意味が無いわ。
本心から、改めてくれたら、私は嬉しいのよ。
メグミ ……………………!!