物語編
第四章 第二六話 物語編
第四章 梵天 と 魔天
第二六話 色界の入り口 と 欲界の入り口
もともと、この地は、天に最も近い場所だった。
労り合いと、譲り合いがある、和合の地だったが、
私が足を、踏み入れてから、人々は欲を持ち始めた。
仏陀に会い、今より良くなる事を、望んだため、
実際には、今より悪くなる事に、臨んでしまった。
真剣に望むほど、真理から外れる、何という悲劇か。
元より、善悪の分別がない、純真無垢な者達が、
私と、出会うことにより、善悪の概念が芽生えて、
善を追うようになると、悪までも負うことになった。
無意識に偏らされた、この世界を元に戻すべく、
私は責任を以って、意識的に戒を説くことにした。
そして、法を求める人々に対し、このように告げた。
「私の出現のせいで、君らは、欲を持つに至り、
我が沈黙のせいで、君らは、欲を膨れ上がらせた。
欲は、その本性故に、決して、後退を赦しはしない。」
「小さな欲ではなく、大いなる欲を持ちなさい。
小さな欲は、他を害するが、自らも害してしまい、
大いなる欲は、他を利するが、自らも利するだろう。」