物語編
第四章 第二七話 物語編
第四章 他害 と 自害
第二七話 他我を危める と 自我を殺める
「第一、君らは、決して、命を殺めてはならぬ。
他の命を殺す者は、必ずや、自らの命が戮されて、
人々の命を守る者は、必ずや、自身の命も護られる。」
すると、或る者が、立ち上がり、静かに尋ねた。
〈我が師よ、肉を食べるとき、獣の命を殺めるが、
これに関して、どのように、考えれば良いだろうか。〉
「我が命を、守りたいなら、肉食を断ちなさい。
断てない者が、絶たずに済む、根拠を説くだろう。
人は特別だから、獣を食べても、何も問題はないと。」
〈師よ、悪い虫が湧いた時は、どう考えるのか。〉
「自らは、仏の道を進んで、虫の命を守りなさい。
其れ故、仏の道を選んでない、他の者に委ねなさい。」
〈師よ、敵が攻めて来た時は、どう考えるのか。〉
「自らは、神の道を勧めて、汝の敵を愛しなさい。
其れ故、神の道を択んでない、他の者に任せなさい。」
〈不殺生の戒、一斉に守る事は、出来ないのか。〉
「出来ない、選ばれない民の上に、仏の道に臨む。
択ばれた事を、有り難く受け止めて、神の道を望め。」