物語編
第四章 第二九話 物語編
第四章 満足 と 不満
第二九話 歓喜を収める と 憂鬱を納める
「第三、君らは、決して、性を弄んではならぬ。
他の愛を汚す者は、必ずや、自らの愛が穢されて、
人々の愛を守る者は、必ずや、自身の愛も護られる。」
すると、別の者が、立ち上がり、静かに尋ねた。
〈我が師よ、体を愛して、心は愛さない者がいる。
これに関して、どのように、考えれば良いだろうか。〉
「真の愛を、守りたいなら、浮気を断ちなさい。
断てない者が、絶たずに済む、根拠を説くだろう。
愛には様々な形がある、たとえ、中身が無くともと。」
〈師よ、子孫を増やす為には、どう考えるのか。〉
「自らは、仏の道を進んで、性の愛を断ちなさい。
其れ故、仏の道を選んでない、他の者に委ねなさい。」
〈師よ、性を聖に化す教えは、どう考えるのか。〉
「自らは、神の道を勧めて、欲の罠を離れなさい。
其れ故、神の道を択んでない、他の者に任せなさい。」
〈不邪淫の戒、一斉に守る事は、出来ないのか。〉
「出来ない、選ばれない民の上に、仏の道に臨む。
択ばれた事を、有り難く受け止めて、神の道を望め。」