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物語編

第四章 第二七話 対話編

CASE 他害 の裏に 自害

 

マナミ ねぇ、ナラカ、地獄って、どういうものなの?
マサシ 地獄は、欲界の最下層、憎悪の世界のことさ。
マナミ 憎悪の良い所、他害って、どういうものなの?
マサシ 他害とは、他を害して、憎悪を楽しむことさ。
マナミ 他人を、苦しめることで、自らが楽しむの?
マサシ うん、意地悪に浸り切って、楽しんでしまう。
マナミ 憎悪を、楽しんでいると、捕われてしまうの?
マサシ そうだよ、憎悪を望むから、地獄に臨むのさ。
マナミ 憎悪の悪い処、自害って、どういうものなの?
マサシ 自害とは、自ら害して、憎悪に苦しむことさ。
マナミ 他人を、苦しめていると、自らも苦しむの?
マサシ うん、意地悪が振り掛かり、苦しんでしまう。
マナミ 憎悪に、苦しんでいると、囚われなくなるの?
マサシ そうだよ、憎悪に厭くから、地獄が空くのさ。
マナミ 他害を、楽しんだだけ、自害に苦しんだら、
    自ずから、憎悪の世界を、乗り越えられるの?
マサシ そうさ、地獄で学ぶことを、学び終えるのさ。
マナミ わたしは、悪人が苦しむのは、好い気味なの。
マサシ そんなこと、言っていると、地獄に嵌まるよ。
マナミ ……………………

 


 

CASE 他害 の先に 自害

 

サトミ 他を害する、他害って、どういうものかな?
メグミ 他害とは、瞋恚を持って、憎を楽しむことよ。
サトミ 他に対して、怒りを持つと、どうなるのかな?
メグミ 他に怒り、我が喜ぶから、瞋恚が強くなるよ。
サトミ 自ら害する、自害って、どういうものかな?
メグミ 自害とは、瞋恚を以って、憎に苦しむことよ。
サトミ 我に対して、怒りを持つと、どうなるのかな?
メグミ 我に怒り、我が憂うから、瞋恚が弱くなるよ。
サトミ つまり、我が楽しめるなら、憎が強くなり、
    強すぎて、我を苦しめるなら、憎が弱くなる?
メグミ そうよ、器に収まるまでは、楽しめるけど、
    多すぎて、器を溢れてくると、苦しめられる。
サトミ じゃあ、他を害する怒りで、楽しんでいると、
    同じだけ、我を害する怒りで、苦しむわけか。
メグミ そうよ、最初から最後まで、地獄の世界を、
    まるごと、経験したとき、この仕組が解るよ。
サトミ そっか、すべて認めないと、悟れないわけね。
    削いだり、殺いでいたり、していたらダメか。
メグミ うふっ、それが得意だから、地獄に生れるの。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 他害 という 自害

 

サトシ 憎の良い面、他害って、どういうものかな?
アツシ 他害とは、良いと思って、他を害することだ。
サトシ 実際に、周りを害して、良いと想えるのかな?
アツシ 思えない、それゆえ、少しずつ我が強くなる。
サトシ じゃあ、自と他を分け、認めようとしないの?
アツシ そうだな、周りを攻めて、我を守ろうとする。
サトシ 憎の悪い面、自害って、どういうものかな?
アツシ 自害とは、良いと想って、我を害することだ。
サトシ 実際に、自らを害して、良いと思えるのかな?
アツシ 想えない、それゆえ、少しずつ我が弱くなる。
サトシ じゃあ、自と他を合せ、見とめようとするの?
アツシ そうだな、自らを責めて、我を壊そうとする。
サトシ つまり、憎悪するほど、他害と自害が生じて、
    どんどん、地獄の世界に、巻き込まれるのか。
アツシ そうだ、嫌いな敵を怨んで、憎悪を楽しむが、
    そのうち、好きな友を恨んで、憎悪に苦しむ。
サトシ そっか、被虐心を抱き、苦しみたくなければ、
    それこそ、嗜虐心を擁き、楽しまないことか。
アツシ そうだ、それが解れば、地獄に魅入られない。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 自害なき他害 と 他害なき自害

 

サトミ 他害と自害、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 地獄の入口、他害って、どういうものかな?
メグミ 他害とは、瞋恚を持って、他を攻めることよ。
サトミ 地獄の出口、自害って、どういうものかな?
メグミ 自害とは、瞋恚を以って、我を責めることよ。
サトミ 他害を望み、自害に臨まないと、どうなるの?
メグミ 自害なき他害なんて、道が塞がるだけだよ。
サトミ じゃ、我を責めないと、業を摘めないのかな?
メグミ そうよ、業が詰まるから、誰も通れなくなる。
サトミ 自害を望み、他害に臨まないと、どうなるの?
メグミ 他害なき自害なんて、道が廃れるだけだよ。
サトミ じゃ、他を攻めないと、業を積めないのかな?
メグミ そうよ、業が消えるから、誰も通らなくなる。
サトミ 他害だけでは、積み過ぎて、飽いてしまい、
    自害ばかりでは、摘み過ぎて、空いてしまう。
メグミ うん、他害と自害、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、自害を究め、他害を極めていくの?
メグミ そうなの、他害を超え、自害を越えていくの。
サトミ ……………………!!

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