第四章 第三一話 対話編
CASE 勝利 の裏に 敗北
マナミ ねぇ、アスラ、修羅って、どういうものなの?
マサシ 修羅は、欲界の第二層、闘争の世界のことさ。
マナミ 闘争の良い所、勝利って、どういうものなの?
マサシ 勝利とは、勝ち続けて、闘争を楽しむことさ。
マナミ 勝って、価値を得るから、自ずから楽しむの?
マサシ うん、勝利感に浸り切って、楽しんでしまう。
マナミ 闘争を、楽しんでいると、捕われてしまうの?
マサシ そうだよ、闘争を望むから、修羅に臨むのさ。
マナミ 闘争の悪い処、敗北って、どういうものなの?
マサシ 敗北とは、負け続けて、闘争に苦しむことさ。
マナミ 負けて、価値を損うから、自ずから苦しむの?
マサシ うん、敗北感に振り切って、苦しんでしまう。
マナミ 闘争に、苦しんでいると、囚われなくなるの?
マサシ そうだよ、闘争に厭くから、修羅が空くのさ。
マナミ 勝利を、楽しんだだけ、敗北に苦しんだら、
自ずから、闘争の世界を、乗り越えられるの?
マサシ そうさ、修羅で学ぶことを、学び終えるのさ。
マナミ わたしは、誰よりも早く、乗り越えるつもり。
マサシ そんなこと、言っていると、修羅に嵌まるよ。
マナミ ……………………
CASE 勝利 の先に 敗北
サトミ 勝ち続ける、勝利って、どういうものかな?
メグミ 勝利とは、瞋恚を持って、争を楽しむことよ。
サトミ 他と戦って、良いと思うと、どうなるのかな?
メグミ 他に怒り、我が喜ぶから、瞋恚が強くなるよ。
サトミ 負け続ける、敗北って、どういうものかな?
メグミ 敗北とは、瞋恚を以って、争に苦しむことよ。
サトミ 他と戦って、悪いと想うと、どうなるのかな?
メグミ 我に怒り、我が憂うから、瞋恚が弱くなるよ。
サトミ つまり、我が楽しめるなら、争が強くなり、
強すぎて、我を苦しめるなら、争が弱くなる?
メグミ そうよ、器に収まるまでは、楽しめるけど、
多すぎて、器を溢れてくると、苦しめられる。
サトミ じゃあ、他を貶める怒りで、楽しんでいると、
同じだけ、自ら辱める怒りで、苦しむわけか。
メグミ そうよ、最初から最後まで、修羅の世界を、
まるごと、経験したとき、この仕組が解るよ。
サトミ そっか、すべて認めないと、悟れないわけね。
攻めたり、責めていたり、していたらダメか。
メグミ うふっ、それが得意だから、修羅に生れるの。
サトミ ……………………!!
CASE 勝利 という 敗北
サトシ 争の良い面、勝利って、どういうものかな?
アツシ 勝利とは、良いと思って、勝ち続けることだ。
サトシ 実際に、価値を占めて、良いと想えるのかな?
アツシ 思えない、それゆえ、少しずつ我が強くなる。
サトシ じゃあ、価値を伝えず、後続を認めないの?
アツシ そうだな、後進を育てず、我を守ろうとする。
サトシ 争の悪い面、敗北って、どういうものかな?
アツシ 敗北とは、良いと想って、負け続けることだ。
サトシ 実際に、価値を忘れて、良いと思えるのかな?
アツシ 想えない、それゆえ、少しずつ我が弱くなる。
サトシ じゃあ、価値を伝えて、後続を認めるのかな?
アツシ そうだな、後進を育てて、我を壊そうとする。
サトシ つまり、競争するほど、勝利と敗北が生じて、
どんどん、修羅の世界に、巻き込まれるのか。
アツシ そうだ、我を勝者と捉えて、価値を楽しむが、
そのうち、我を敗者と捕えて、価値に苦しむ。
サトシ そっか、敗北感を抱き、苦しみたくなければ、
それこそ、勝利感を擁き、楽しまないことか。
アツシ そうだ、それが解れば、修羅に魅入られない。
サトシ ……………………!!
CASE 敗北なき勝利 と 勝利なき敗北
サトミ 勝利と敗北、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 修羅の入口、勝利って、どういうものかな?
メグミ 勝利とは、瞋恚を持って、勝ち続けることよ。
サトミ 修羅の出口、敗北って、どういうものかな?
メグミ 敗北とは、瞋恚を以って、負け続けることよ。
サトミ 勝利を望み、敗北に臨まないと、どうなるの?
メグミ 敗北なき勝利なんて、道が塞がるだけだよ。
サトミ じゃ、負け続けないと、業を摘めないのかな?
メグミ そうよ、業が詰まるから、誰も通れなくなる。
サトミ 敗北を望み、勝利に臨まないと、どうなるの?
メグミ 勝利なき敗北なんて、道が廃れるだけだよ。
サトミ じゃ、勝ち続けないと、業を積めないのかな?
メグミ そうよ、業が消えるから、誰も通らなくなる。
サトミ 勝利だけでは、積み過ぎて、飽いてしまい、
敗北ばかりでは、摘み過ぎて、空いてしまう。
メグミ うん、勝利と敗北、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、敗北を究め、勝利を極めていくの?
メグミ そうなの、勝利を超え、敗北を越えていくの。
サトミ ……………………!!