物語編
第四章 第三七話 物語編
第四章 自力 と 他力
第三七話 我を明らめる と 我を諦らめる
小さな女の子が、大声を出して、泣き叫ぶため、
私も他の者も、何か奇怪しい事に、気づき始めた。
彼女の泣き方は、感動して泣く、泣き方でなかった。
彼女は、泣きながら、私の魂に向かって訴え始めた。
〈私は、立派な先生が、ここに居るって聞いて、
訪ねて来たのに、お兄さんは、何も分かってない。
私が、泣いている、意味だって、何も解かってない。〉
〈お兄さんの、空なんて、単なる空論じゃない。
空について、説いているだけ、解かっているだけ。
流石、先生は、正直なんだって、喜んでいたんだよ。〉
〈なのに、悟っているなんて、言い出したから、
兄さんでも、嘘を吐くんだって、涙が出てきたよ。
中途半端でも、正直に生きてれば、それで良いのに。〉
〈兄さんは、愛を説いているって、言ったけど、
説くだけの愛なんて、口説いているだけじゃない。
本物なら、凍り付いた、敵の心まで、溶いてみてよ。〉
〈兄さんは、法を説いているって、言ったけど、
説くだけの法なんて、言い訳しているだけでしょ。
本物なら、絡み付いた、悪の業まで、解いてみてよ。〉