物語編
第四章 第三九話 物語編
第四章 勧戒 と 禁戒
第三九話 善を勧める戒 と 悪を禁じる戒
名を尋ねられると、彼女は、もう泣かなかった。
聡明な顔つきになり、私の目を見つめて、答えた。
[わたしの使命は、真理の入り口、真理って言うの。]
前の章には、迷宮の出口を、守ってくれていた。
今回の生では、真理の入口を、護ってくれている。
いつの時代にも、この子は、使命に奉げ生きるのだ。
人の寿命は、長さが適切で、戯曲に溢れている。
これより、命が短ければ、苦楽の経験を望めなく、
これよりも、命が長ければ、再生の体験に臨めない。
彼女の姿を見ていると、笑いが込み上げて来る。
今回は、なんとまあ、可愛らしく生まれたものだ。
それとも、この子でも、年を取れば、ああなるのか。
こんな他愛もないことを、考えることも楽しい。
憂いも有るが、喜びも有る、人の生は素晴らしい。
人が思う以上に、人間の命は、有り難い使命である。
[ねえ、お兄さんは、どうして、泣いているの?]
「いやね、お嬢さんが、このまま、年を取ったら、
どんな、お婆さんに、なるのかなと、思ったからさ。」
もう、ひどいよと、彼女は、大きな声で笑い出した。