物語編
第四章 第四十話 物語編
第四章 持戒 と 辞戒
第四十話 戒を持する念 と 戒を辞する念
私は、選び抜かれた、弟子の方を、振り向いた。
七年前、この地に、落ち着いてから、この時まで、
仏を探す労力を、弟子を育む事に、振り向けて来た。
その甲斐あって、想像以上に彼らは鍛えられた。
彼らの活躍もあり、私の学園の名は世に広がった。
そんな我が愛する息子に、我が愛する娘を紹介した。
「諸君、この可愛らしい子は、我が法の愛娘だ。
私が、生に躓いていたから、章を進めに現われた。
今から、私は、救世主を求め、旅立たねばならない。」
「留守中、私に代わって、娘を育てて貰いたい。
我が娘だからと言って、特別扱いしてはならない。
教えに漏れが生じて、君らは無智に覆われるだろう。」
「彼女は、高い世界から、降りて来た魂である。
神の子だからと言って、有り難がってはならない。
偶像に救いを求めて、君らは足元を掬われるだろう。」
「たとえ、叱り付けようと、説き伏せようとも、
彼女に、舌先で法を説いても、聴く耳を持たない。
威丈高に、叫ぶ大人の姿を、幼子の癇癪の如く見る。」
「唯一、人が喜んで行えば、彼女も悦んで行う。
娘を、育て上げたければ、先ず自らが手本を示せ。
彼女が、鏡であると考えて、自らを育み娘を育てよ。」