物語編
第四章 第四一話 物語編
第四章 断悪 と 修善
第四一話 悪を断じる行 と 善を修める行
「愛する弟子よ、今まで私は、顕教を唱道した。
すでに君らは、気が付いている、かもしれないが、
この旧い教えは、選民思想という、限界が存在する。」
「選ばれると善くなり、択ばれないと悪くなる。
全員が善を選べない、悪の上に成り立つ善であり、
悪しき者の不幸の上に、善き者の幸福が授けられる。」
「善なる者は、善を好むため、顕教で救えるが、
悪しき者は、善を憎むため、顕教で救い切れない。
それゆえ、私は悪を救うため、密教を求めに向かう。」
「まだ、世の人々は、密教の法に耐えられない。
いま、密教を明かせば、善人は善を疑うばかりか、
空の意味を取り違え、善が悪に堕してしまうだろう。」
「善悪を説く者が、善悪を解く訳には行くまい。
預言者を演じて、善悪を説いた、私は引き下がり、
救世主を出迎えて、善悪を解いて、頂くことにする。」
「私は、就任式当日に、姿を隠すことになるが、
君たちに、以後のことを、任せても良いだろうか。
主を迎える、その日を待ち、旧約を交し民を育てよ。」
「私は、裏切者として、人々に憎まれるだろう。
慢心した、堕天使として、世間に疎まれるだろう。
それで良い、神意は伝えず、清浄の世を保つが良い。」