物語編
第四章 第四三話 物語編
第四章 識別 と 直観
第四三話 二に分ける智 と 一に合せる智
物でも、情報でも、それが、仏の居所だろうと、
彼らには、金銭さえ与えれば、何でも手に入った。
元より、出任かせも多かったが、手掛りも多かった。
何の役にも立たない、仏を探す奇矯な男として、
彼らの中で有名になり、様々な人間が寄って来た。
それは、私の欲を使って、儲けようと企む輩だった。
私は、何度も騙されたが、彼らを憎むことなく、
黙々と、彼らの招きに乗り、法縁を付けて回った。
一方、一年経ち、二年が経ち、私の業は重くなった。
そして、いよいよ、十年の歳月が経ったときに、
実際、仏陀に会ったという、人物まで辿り着いた。
その男は、不敵に笑いながら、私の欲に付け入った。
〈命を懸けて、探し出した、仏陀の手掛かりを、
雀の涙ほど、金を払うだけで、探り出そうと言う。
俺も仏も、軽く見られたものだ、冗談だと言いがな。〉
〈もし、命を懸けて、貴様が仏陀を求めるなら、
これから、俺が与える、五つの試練を越えてみろ。
言う通りに、全て果せば、教えて遣らない事もない。〉
物の見事に、欲を操られて、私に断る術は無かった。