第四章 第四十話 対話編
CASE 持戒 の裏に 辞戒
マナミ 戒を持する、持戒って、どういうものなの?
マサシ 持戒とは、欲に捕われて、欲を超えることさ。
マナミ 戒を辞する、辞戒って、どういうものなの?
マサシ 辞戒とは、戒に囚われず、戒を越えることさ。
マナミ う~ん、良く解らない、どういうことなの?
マサシ 欲は、Aと非Aを比べて、Aを良く見ること。
Aが多くて、非Aが少ない、偏った状態だよ。
マナミ つまり、Aが好きであり、非Aが嫌いだから、
このまま、放って置いたら、Aが多くなるの?
マサシ そうさ、そこで、戒を使って、釣り合わせる。
マナミ 勧戒を使って、非Aを増やすと、どうなるの?
マサシ 非Aが殖え、Aと等しくなり、釣り合うのさ。
マナミ 禁戒を遣って、Aを減らすとき、どうなるの?
マサシ Aが衰えて、非Aと並ぶため、釣り合うのさ。
マナミ このまま、戒を守り続けたなら、どうなるの?
マサシ Aが少なく、非Aが多い、偏った状態になる。
マナミ 逆の方に、偏っていくから、戒を辞するの?
勝手に、守っていた戒を、辞めて良いのかな?
マサシ ほら、欲は超えたけど、戒に捕われているよ。
マナミ ……………………
CASE 持戒 の先に 辞戒
サトミ あたしね、神様から、戒を授かったんだよ。
メグミ いいね、どういう戒を、神様から授かったの?
サトミ うんとね、人の物を、盗んではいけないよ。
メグミ それは、放って置くと、偸んでいるからだね。
サトミ うん、だって、人から盗んだ方が早いもん。
メグミ そっか、そういうことなら、戒を教わるよね。
サトミ もうしないよ、破ったら、罰があるからね。
戒と一緒に、神様から、律も授かったんだよ。
メグミ うん、罰を受けない様に、戒を守れば良いよ。
サトミ このまま、戒を守り続けると、どうなるの?
メグミ いずれ、放って置かれても、偸まなくなるよ。
サトミ 神様から、罰が無くても、盗まなくなるの?
メグミ そうよ、戒と一緒に、律も取り上げられるよ。
サトミ えっ、罰が無かったら、また偸んじゃうかも。
メグミ そっか、そんなことなら、また授かるよね。
サトミ それなら、取り上げないで、授けて置いてよ。
メグミ それはだめ、戒に囚われると、意味が無いよ。
サトミ 戒は解であり、教わり続けたら、意味が無い?
メグミ うん、解けたら、智に変えて、忘れて良いの。
サトミ ……………………!!
CASE 破戒 と 持戒 と 辞戒
サトシ 戒を破ること、破戒って、どういうものかな?
マサシ 破戒とは、欲に負けるから、戒を破ることさ。
サトシ 戒を持すこと、持戒って、どういうものかな?
マサシ 持戒とは、欲に勝てるから、戒を守ることさ。
サトシ 戒を辞すこと、辞戒って、どういうものかな?
マサシ 辞戒とは、欲を超えたから、戒を越すことさ。
サトシ う~ん、良く解からない、どういうことなの?
マサシ 欲に塗れて、右しか選べない人は、どうする?
サトシ うん、左を択べるように、戒を守ると思うよ。
マサシ 欲に負けて、右を選びたい時には、どうする?
サトシ うん、左しか択ばせない、戒を破ると想うよ。
マサシ 欲に勝って、右も左も選べた時は、どうする?
サトシ う~ん、これまで通り、戒を守ると思うけど。
マサシ 右も左も、等しく選べるようになった人が、
左を択ばせる戒を、守り続けたら、どうなる?
サトシ 偏らなくなったのに、反対に、偏っちゃうの?
マサシ うん、だから、戒を守ることを、辞めるのさ。
サトシ ええっ、せっかく、護れるようになったのに?
マサシ うん、今度から、戒を辞める、戒を守るのさ。
サトシ ……………………
CASE 辞戒なき持戒 と 持戒なき辞戒
サトミ 持戒と辞戒、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 解を覚える、持戒って、どういうものかな?
メグミ 持戒とは、欲を辞すため、戒を持することよ。
サトミ 解を忘れる、辞戒って、どういうものかな?
メグミ 辞戒とは、徳を持すため、戒を辞することよ。
サトミ 持戒を望み、辞戒に臨まないと、どうなるの?
メグミ 辞戒なき持戒なんて、唯の厄介に過ぎないよ。
サトミ じゃ、欲を超えるため、戒に縛られるのかな?
メグミ ううん、戒に捕らわれる、欲に囚われるのよ。
サトミ 辞戒を望み、持戒に臨まないと、どうなるの?
メグミ 持戒なき辞戒なんて、只の破戒に過ぎないよ。
サトミ じゃ、戒を越えるため、戒を守らないのかな?
メグミ ううん、欲を満たすため、戒を破るだけだよ。
サトミ 持戒だけは、欲に囚われず、戒に捕われる。
辞戒ばかりは、戒に捕われず、欲に囚われる。
メグミ うん、持戒と辞戒、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、辞戒を究め、持戒を極めていくの?
メグミ そうなの、持戒を超え、辞戒を越えていくの。
サトミ ……………………!!