物語編
第四章 第四四話 物語編
第四章 妙法 と 秘法
第四四話 人に説く教え と 神に解く教え
〈第一の試練は、不飲酒の戒を、見破ることだ。
戒を説く者が、戒を解く事が、貴様に出来るのか。
飲酒の罠を、貴様が解けるなら、仏陀に会せてやる。〉
〈そもそも、飲酒の過患を、解かっているのか。〉
「智慧が、無智に変わり、空元素の病に罹ること。」
〈然り、それを心得ながら、不飲酒の戒を破れるか。〉
〈思いの外、難しくはないと、考えていないか。
飲んだら、呑まれるくらい、大した試練でないと。
残念だ、貴様が呑むべき酒は、この真実に酔う薬だ。〉
男に手渡された薬は、中毒性のある劇薬だった。
こんな薬を飲めば、私は必ず廃人と化してしまう。
しかし、私は、躊躇うことなく、麻薬を飲み込んだ。
耐え難い快楽の後から、忍び難い苦に襲われる。
鋭い痛みに気が狂わされ、脳の中が切り刻まれた。
七昼夜、のた打ち回り、覚めた時に片目がなかった。
悶え苦しんだ時に、指で突いてしまったらしい。
残っていた目も、曇ってしまい、汚れてしまった。
研ぎ澄まされ、万物を見通す目は、もはや無かった。
身に余る快楽は、器を壊すよなあ、と、男は笑った。