物語編
第四章 第四五話 物語編
第四章 五戒 と 五仏
第四五話 人が守る教え と 神が護る教え
〈第二の試練は、不妄語の戒を、見破ることだ。
戒を説く者が、戒を解く事が、貴様に出来るのか。
妄語の罠を、貴様が解けるなら、仏陀に会せてやる。〉
〈そもそも、妄語の過患を、解かっているのか。〉
「真実が、幻想に変わり、風元素の病に罹ること。」
〈然り、それを心得ながら、不妄語の戒を破れるか。〉
〈思いの外、難しくはないと、考えていないか。
吐いたら、憑かれるくらい、大した試練でないと。
残念だ、貴様が吐くべき嘘は、人の生を狂わす嘘だ。〉
男は、新婚の夫婦を指差し、その両者、別々に、
互いに、不倫の疑惑があると、告げる様に言った。
そんな虚言に巻き込めば、幸せな二人に亀裂が入る。
私が迷っていると、言い訳が欲しいのかと言い、
彼らは前世に於いて、睦まじい新婚を引き裂いた、
身から出た錆であると、そんな夢物語を解き始めた。
私は、断腸の思いで、彼らの幸福を打ち壊した。
彼らは、互いに啀み合い、憎しみ合うようになり、
一方、私は動きが鈍くなり、直観が冴えなくなった。
復讐が適って、良かったじゃないかと、男は笑った。