物語編
第四章 第四六話 物語編
第四章 秘密 と 金剛
第四六話 心を開かない と 心が動じない
〈第三の試練は、不偸盗の戒を、見破ることだ。
戒を説く者が、戒を解く事が、貴様に出来るのか。
偸盗の罠を、貴様が解けるなら、仏陀に会せてやる。〉
〈そもそも、偸盗の過患を、解かっているのか。〉
「果実が、過分に変わり、火元素の病に罹ること。」
〈然り、それを心得ながら、不偸盗の戒を破れるか。〉
〈思いの外、難しくはないと、考えていないか。
偸んだら、盗まれるくらい、大した試練でないと。
残念だ、貴様が偸むべき物は、何にも代え難き物だ。〉
男は、新興の教団を指差し、本殿に盗みに入り、
捧げられた、信者の志を、偸んで来る様に言った。
そんな事件を起こせば、信者達の拠り所が失われる。
私が迷っていると、言い訳が欲しいのかと言い、
彼らは前世に於いて、狂った信仰で人を苦しめた、
自業自得に過ぎないと、そんな夢物語を解き始めた。
私は、苦渋の決断で、彼らの信仰を打ち壊した。
彼らは、互いに疑い合い、貶しめ合うようになり、
一方、私は衝突が多くなり、実行が伴わなくなった。
報復が適って、良かったじゃないかと、男は笑った。