物語編
第四章 第四七話 物語編
第四章 不盗 と 偸盗
第四七話 財を盗まない と 財を貯めない
〈第四の試練は、不邪淫の戒を、見破ることだ。
戒を説く者が、戒を解く事が、貴様に出来るのか。
邪淫の罠を、貴様が解けるなら、仏陀に会せてやる。〉
〈そもそも、邪淫の過患を、解かっているのか。〉
「快楽が、苦痛に変わり、水元素の病に罹ること。」
〈然り、それを心得ながら、不邪淫の戒を破れるか。〉
〈思いの外、難しくはないと、考えていないか。
犯したら、侵されるくらい、大した試練でないと。
残念だ、貴様が犯すべき物は、貴様が犯し難き時だ。〉
男は、恋人を待つ娘を指差し、相手が来る前に、
娘を誑かし、新たな春を、魅せて来る様に言った。
そんな状況に誘ったら、幸せな時は二度と戻らない。
私が迷っていると、言い訳が欲しいのかと言い、
彼らは前世に於いて、幼馴染の男女を刺し殺した、
因果応報に過ぎないと、そんな夢物語を解き始めた。
私は、窮余の断案で、彼らの関係を打ち壊した。
彼らは、互いに責め合い、妬たみ合うようになり、
一方、私は執着が多くなり、感情に縛られて行った。
雪辱が適って、良かったじゃないかと、男は笑った。