第四章 第四七話 対話編
CASE 不盗 の裏に 偸盗
マナミ 偸盗に関する、天の法は、どういうものなの?
マサシ 天の法では、財を偸んだら、財を盗まれるよ。
マナミ この天の法を、認めない人は、どう考えるの?
マサシ 財を偸めば、自らが得をすると、捕えるのさ。
マナミ この天の法を、見とめる人は、どう考えるの?
マサシ 財を盗めば、自らが損をすると、捉えるのさ。
マナミ 天の法を、認められたら、偸まなくなるの?
マサシ 我がために、財を偸む人は、消えてくるけど、
人々のために、財を盗む人が、現れてくるよ。
マナミ 我がために、偸まない人は、どう考えるの?
マサシ 先に得しても、後で損すると、捕えているよ。
マナミ 他のために、盗める人って、どう考えるの?
マサシ 先に損しても、後で徳すると、捉えているよ。
マナミ 偸んだら、盗まれて、自ら損を受けるけど、
他のために、偸んだら、其の損が徳になるの?
マサシ うん、損を厭わない、広大な心が、徳なのさ。
マナミ う~ん、偸めば得する、そう考えてないの?
マサシ 君は、是までの道を、辿って来てないのかい?
大丈夫、そういう人に、この道は解かないよ。
マナミ ……………………
CASE 不盗 の先に 偸盗
サトシ 偸まない階、不偸って、どういうものかな?
マサシ 不偸とは、我がためには、偸まない戒なのさ。
サトシ 我がために、盗んでいると、どうなるのかな?
マサシ 穢れが集まり、内が汚くなり、外が浄くなる。
サトシ 我がために、偸まないなら、どうなるのかな?
マサシ 汚れを捨てて、内が清くなり、外が穢くなる。
サトシ 盗ませる階、偸盗って、どういうものかな?
マサシ 偸盗とは、世のためには、盗ませる界なのさ。
サトシ 世のために、偸まないなら、どうなるのかな?
マサシ 役が滞るから、我が清いまま、世が穢いまま。
サトシ 世のために、盗んでいると、どうなるのかな?
マサシ 役が巡るから、我は汚くなり、世が浄くなる。
サトシ せっかく、我が汚れを、外に投げ捨てたのに、
今度は、世の穢れを、内に受け容れていくの?
マサシ そうだよ、自分だけが、幸せなら良いのかい?
サトシ 良いよ、僕が戒を守って、器を磨いたんだ。
マサシ この先は、世の界を護って、器を広げようよ。
サトシ 嫌だよ、器を開けてたら、器が汚れちゃうよ。
マサシ そうかい、そんな人に、その先は解かないよ。
サトシ ……………………
CASE 不盗 という 偸盗
サトミ あんた、世のためなら、偸んで良いなんて、
到底、認められない、法を解いているそうね。
マサシ これは、天人の教えで、天の法が前提にある。
サトミ 天が司る、前提の法って、どういうものなの?
マサシ 財を偸めば、物が盗まれる、ということさ。
それを前提に、税金を取ると、どうなるかな?
サトミ 偸んだら、盗まれるし、税が取れなくなるわ。
マサシ すると、税収が減るから、国が滅びてしまう。
サトミ それでも、あたしはイヤよ、誰か取ってよね。
マサシ 財を集めて、財を貯め込むと、どうなるかな?
サトミ 貯えても、違法じゃないし、放って置くわよ。
マサシ すると、財が集まるから、財が偏っていくよ。
サトミ それでも、あたしはイヤよ、誰か均してよね。
マサシ 強い者から、財を奪って、弱者に回さないの?
サトミ それこそ、犯罪でしょ、絶対に遣らないわよ。
マサシ すると、貧しさに苦しみ、悪が増えていくよ。
サトミ それでも、あたしはイヤよ、誰か奪ってよね。
マサシ 我が身しか、考えに入らない、君は近づくな。
この法は、治める側の教え、天の訓えなのさ。
サトミ ……………………
CASE 偸盗 と 不盗 と 宝珠
マサシ 財を掠める、偸盗は、どういうものですか?
アキラ 偸盗とは、欲に負けて、財を破ることである。
マサシ 我がために、宝を偸むと、どうなりますか?
アキラ 財が盗まれる。宝を通して、欲が損に変わる。
マサシ 財を貯める、不盗は、どういうものですか?
アキラ 不偸盗は、欲に勝って、財を守ることである。
マサシ 皆のために、宝を護ると、どうなりますか?
アキラ 財が守られる。宝を透して、欲が得に換わる。
マサシ 財を活かす、宝珠は、どういうものですか?
アキラ 宝珠とは、欲を越えて、財を司ることである。
マサシ 他のために、宝を盗むと、どうなりますか?
アキラ 財が流される。宝を徹して、欲が徳に替わる。
マサシ たとえ、一時的に、我が財が偸まれようと、
最終的に、使われるなら、宝を盗むのですか?
アキラ たとえ、代表的に、我が財が掠められても、
全体的に、遣われるなら、宝を奪うのである。
マサシ その器こそが、宝珠の眷属、地の菩薩ですか?
アキラ 逆説的だが、閊えているから、使えなくなる。
宝珠の一族は、財貨と罪過、その両界を司る。
マサシ ……………………!!
CASE 偸盗なき不盗 と 不盗なき偸盗
サトミ 不盗と偸盗、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 偸まない解、不盗って、どういうものかな?
メグミ 不盗とは、自我のために、財を守らせる戒よ。
サトミ 盗ませる解、偸盗って、どういうものかな?
メグミ 偸盗とは、自然のために、財を巡らせる界よ。
サトミ 不盗を望み、偸盗に臨まないと、どうなるの?
メグミ 偸盗なき不盗なんて、財が溜まるだけなのよ。
サトミ じゃ、財を守るばかり、財が巡らないのかな?
メグミ そうよ、財が偏らされて、財が腐っていくよ。
サトミ 偸盗を望み、不盗に臨まないと、どうなるの?
メグミ 不盗なき偸盗なんて、財が漏れるだけなのよ。
サトミ じゃ、財が巡るばかり、財を守らないのかな?
メグミ そうよ、財が均らされて、財が流れていくよ。
サトミ 不盗だけでは、財に縛られ、罪に変わるし、
偸盗ばかりでは、財が破られ、罪に換わるの?
メグミ うん、不盗と偸盗、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、偸盗を究め、不盗を極めていくの?
メグミ そうなの、不盗を超え、偸盗を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 三 十 三 天
マサシ 三十三天、第二天界は、どういうものですか?
アキラ 第二天界は、秩序を守る、天人の住居である。
マサシ 須弥山の頂に、どんな神が、住まうのですか?
アキラ 帝釈天が住まい、アシュラを、拒もうとする。
マサシ 須弥山の麓に、どんな神が、住まうのですか?
アキラ 阿修羅が住まい、インドラに、挑もうとする。
マサシ どうして、帝釈天は、頂を譲らないのですか?
アキラ 天人は、欲に捕われて、秩序を護ろうとする。
マサシ どうして、阿修羅は、頂に焦がれるのですか?
アキラ 修羅は、欲に囚われて、秩序を壊そうとする。
マサシ 阿修羅は、帝釈天に挑んで、勝てるのですか?
アキラ 威徳に優る、帝釈天には、絶対に勝てない。
マサシ それでは、秩序は、永遠に守られるのですか?
アキラ いや、それについては、尋ねるべきではない。
マサシ 時が来ました、真実とは何か、示して下さい。
アキラ 天の戦い、敵は友に生まれ、友は敵に産まれ、
彼らが、欲を争う限りは、立場が入れ替わる。
マサシ 何と悲しい、彼らは何のために、戦うのか。
アキラ 戦い疲れ、欲が巡ることを、悟るためである。
マサシ ……………………
CASE 第 二 天 界
サトシ あのね、第二天界って、どういうものかな?
マサシ それはね、財を司るもの、欲界の天界なのさ。
サトシ 天を通さず、財が偏るほど、どうなるのかな?
マサシ 欲が強い者に、財が集まって、財が腐るのさ。
サトシ 天を徹して、財が広がると、どうなるのかな?
マサシ 欲が深い者の、財が奪われて、財が蘇るのさ。
サトシ 欲の世界は、放って置くと、その良く故に、
財が腐るから、財を管理する、天界が有るの?
マサシ その通りさ、偏り過ぎると、財は罪になるよ。
サトシ 具体的に、悪人に対して、何を行っているの?
マサシ 強欲な者が、独占を企んで、集めないように、
貯え込む者に、天災を授けて、奪い取るのさ。
サトシ 具体的に、善人に対して、何を為しているの?
マサシ 寡欲な者が、貧困に窮して、挫けないように、
善を積む者に、天才を与えて、鍛え抜くのさ。
サトシ 天に甘えて、財を乞うたら、悪人と同じなの?
マサシ そうだよ、他から奪って、財が罪になるのさ。
サトシ う~ん、善人まで鍛え抜く、必要は無いよね。
マサシ こうして、財を奪ってしまう、それが罪だよ。
サトシ ……………………